ケープタウン
これは、南アフリカ・ケープタウンを舞台にした刑事ドラマ。
主演は、フォレスト・ウィテカーとオーランド・ブルームと言うハリウッド俳優で、英語作品ですが、原作はフランスの小説「Ｚｕｌｕ」で、監督を始めとする製作スタッフもフランス人と言う、歴としたフランス映画です。
ケープタウン郊外の植物園で若い女性の撲殺死体が発見された。体内からは麻薬と思しき未知の薬物が検出され、捜査を担当する強行犯撲滅課のアリ・ソケーラ警部は、信頼できる部下のダン、不良刑事のブライアンと共に、最後に被害者と目撃されたスタンという麻薬の売人を探し始める。
被害者の通話記録から、聞き込みを始めた３人だが、浜辺で屯していた集団から襲撃を受け、ダンが殉職してしまう。
浜辺にいた集団は、近くにある何かを警備していたらしい。連中は一体何を守ろうとしていたのか？
やがてアリたちは、社会の裏でうごめくグロテスクな真実に接近して行く……
この映画は、オーランド・ブルームが飲んだくれで女にだらしのない不良刑事を演じ、フォレスト・ウィティカーが寡黙で真面目な黒人刑事を演じるバディ・ムービーのスタイルを取っています。
刑事ドラマとしてはお馴染みのスタイルですが、この映画の面白い所は、バディ・ムービーの定番描写である個性のちぐはぐさによる軋轢を前面に押し出さず、個々のドラマをそれぞれに描いて、相互理解することなくクライマックスに突入していく事。まぁ、個人主義のフランス人らしい、と言えばそうなのですが……
見所としては、持ち前の“貴公子”キャラを捨てたオーランド・ブルームのやさぐれっぷりもいいのですが、この映画としては、やはりフォレスト・ウィティカー演じるアリ警部でしょう。
少年時代に父をリンチで殺され、自身も大きな障害を残す傷を負った、その怨みも怒りも抑え込み、ネルソン・マンデラの意を尊重し、全てを「赦せる」のだ、と信じて白人上司の下で従順に働いて来た、その半生。演じるのがフォレスト・ウィティカーと言うこともあって「大統領の執事の涙」の主人公とも重なる人物像は、決して「面従腹背」と一言で片づけられない、複雑な感情を抱え込んでいます。
上司から捜査中止を命じられても、あくまで己の信じる「正義」を通すために活動して来たアリが、ある事件を元に抑えていた怒りを爆発させるクライマックスの展開は見応え充分。
「俺たちは警官なんだ、検挙しよう」と言うブライアンを殴り倒し、ショットガン１丁を手に黒幕の潜むアジトにひとり殴り込む……男がこれまで歩んで来た人生に怒りを持って決着をつける、その悲壮な後ろ姿が胸を打ちます。
映画は、アリのトラウマになっている記憶に始まり、ミステリとして謎を提示。全ての謎解きの後で、事件と、復讐と、そして己の人生の、全てに決着をつける終局に辿り着きます。
謎解きとアクションだけでは終わらない、見応えのある映画でした。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
ジェローム・サル
■出演
アリ・ソケーラ ・・・ フォレスト・ウィティカー
ブライアン・エプキン ・・・ オーランド・ブルーム
ダン・フレッチャー ・・・ コンランド・ケンプ
（その他のキャスト）
インゲ・ベックマン ティナリー・ヴァン・ウィック ルガルド・ヴァン・デン・ベルグ ランドール・メイジエ
パトリック・リスター ジョエル・カエンベ タニア・ファン・グラン ダニー・キーオ クリスチャン・ベネット
イマン・アイザックス ディーン・スレータ−
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そこは、神に見捨てられた街――
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