複製された男
これは、「プリズナーズ」のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が、ポルトガルのノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの小説を映画化したもの。
主人公は、大学で歴史講師をしているアダム。
大学の講義はマンネリ気味で、恋人メアリーとの関係も冷え始めていた。漠然と満たされぬ日々を送っていたアダムだが、あるとき見た映画の中に自分とそっくりな男を発見する。
他人の空似、と見過ごす事も出来ず、その事が気にかかって仕方のないアダムは、そのダニエル・センクレアと言う俳優の事を手を尽くして調べ上げ、アンソニー・クレアと言う本名に辿り着き、紆余曲折の末に対面する。
だが、ふたりの出会いは思いもよらぬ運命を彼らにもたらすのだった……
映画は、黄ばんだ映像と、どこか煙ったような独特の世界で繰り広げられるミステリアスなサスペンス。
これは独特な雰囲気を持つ映画で、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の引き出しの多さを感じさせるものでした。
この映画、キリスト教のモチーフを巧みに引用しています。
主人公がアダムと言うのは勿論、最初の人間・アダムで、その脇腹の傷は肋骨を抜き取った時の傷でしょう。そして、聖書によれば、その肋骨からイブが作られたのですが、この映画では作られたのはアンソニー。（或いは、その逆か？）
神の御業紛いの事を成すものがいるとすれば……それは悪魔に他ならないのではないでしょうか？
（聖書に詳しくない私的にはこのくらいしか理解出来なかったのが残念な所）
その“神の御業紛い”を行ったのは誰か？、そして、その目的は何か、と言うのが、この映画が抱えるミステリーとなります。
邦題の「複製された男」に対し、原題は「ＥＮＥＭＹ」である事からも、映画が描こうとすることは明かでしょう。
（内容と比較すると邦題はいまいち、ですね）
ふたりの女が身にまとい、そして周辺を飾る蛇のモチーフ、映画に度々出現する蜘蛛のイメージ……アダムに関わるふたりの女には、邪悪な企みを持つ蛇と、罠をかけて待ち構える蜘蛛のイメージが重ねられています。
そして、その正体が露わになった所で映画は終劇を迎えます。
ラストシーンは、予想出来たことでもあったので驚きこそありませんでしたが、相変わらずの鮮やかな締めくくりには感心しました。
（年 月日 にて）
（作品データ）
■監督
■出演
アダム／アンソニー ・・・ ジェイク・ギレンホール
メアリー ・・・ メラニー・ロラン
ヘレン ・・・ サラ・ガドン
（その他のキャスト）
イザベラ・ロッセリーニ ジョシュア・ピース ティム・ポスト ケダー・ブラウン ダリル・ディン
ミシャ・ハイステッド メーガン・メイン アレクシス・ウイガ
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