万能鑑定士Ｑ
モナリザの瞳
これは、松岡圭祐の人気推理小説「万能鑑定士Qの事件簿」シリーズを綾瀬はるか主演で映画化したミステリー。
出版社で雑誌記者として働く小笠原悠斗。やる気はあるのだけど芽が出ず、閑職にトバされそうな彼は、とある取材先で、どんな物でも鑑定する「万能鑑定士Ｑ」を名乗る女性・凜田莉子と出会い、彼女に興味を持って接近を試みる。
そんな折、ルーブル美術館所蔵の名画「モナ・リザ」が４０年ぶりに来日する事になり、臨時学芸員候補として莉子が選ばれる事になった。
選抜試験のためにルーブルに赴いた莉子は、無事合格し、そこで同僚となる美沙と出会う。
帰国後、美沙と共に贋作を見分ける訓練に参加した莉子だが、やがて原因不明の頭痛に見舞われ、自慢の鑑定能力も失ってしまい……
この映画、日本映画として初めてルーブル美術館での撮影を行ったと言う事も話題となりましたが……その肝心のルーブルと、パリロケは殆どＴＶの紀行もの番組のレベルに止まり、ストーリーには殆ど寄与しないのですから、肩透かしもいい所。
また、「人の死なないミステリー」として知られる原作小説は未読ですが、この映画版から推測するに、本格ミステリーと言うよりもライトノベル的なものなのでしょうか？仕込まれた奇抜なアイデアは、面白いと思う部分もあるものの、全体的にリアリティが欠如しているように思いました。
それでも、映画として面白いものになっていればよいのですが、最大の問題は、莉子に仕掛けられた罠が大げさに過ぎる割には、その仕掛けた動機が納得出来ない、と言うこと。
ネタバレになってしまいますが、犯行グループの目的であった「モナリザ」を盗み出すと言う事に対し、あのやり口では莉子が障害になるとは思えず、莉子不在の状況でも、学芸員により簡単に贋作と入れ替えた事が判ってしまうのですから……
勿論、所詮はエンターテイメントである映画の描写ですから、多少のリアリティ欠如は目を瞑るにしても、その動機も判らない、納得も出来ないものを見せられるのでは、到底、面白いとは言えないでしょう。
また、サスペンスの盛り上げも今ひとつですし、あれこれ描かれるトリックも稚拙で、ほぼ失笑もの。この辺りは、映像化する際に少しは考えて欲しいものです。
「万能鑑定士」と言う設定に面白さはあり、安易に人を殺さない推理モノと言うスタンスにも好感は持てますし、綾瀬はるかと、その綾瀬はるかがずんぐりして見える程にスレンダーな初音映莉子と言う美女ふたりの共演もいい。
でも、これは到底、本格ミステリーと言えるものではなく、実写映画とするにはあまりにリアリティに欠けています。
現状の内容では、せいぜいＴＶスペシャルドラマが適当ではなかったか、と思います。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
佐藤信介
■出演
凜田莉子 ・・・ 綾瀬はるか
小笠原悠斗 ・・・ 松坂桃李
流泉寺美沙 ・・・ 初音映莉子
（その他のキャスト）
ピエール・ドゥラドンシャン 橋本じゅん 村杉蝉之介 児嶋一哉 角替和枝
榮倉奈々 村上弘明
■コピー
彼女の瞳に世界が惑わされる。
■Ｌｉｎｋ
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