ルパン三世
カリオストロの城
（デジタルリマスター版）
これは、１９７９年に公開された劇場版「ルパン三世」の第二弾。監督は、今や日本国民誰しもが認めるアニメの巨匠・宮崎駿。
モナコの国営カジノから鮮やかに大金を盗み出したものの、それが「ゴート札」と呼ばれる幻のニセ札だと気付いたルパン。
その出処を追って、ルパンは相棒の次元と共に、ヨーロッパの小国カリオストロ公国へ向かう。
そこで２人は、何者かに追われていた花嫁衣装の少女を救い出すが・・・
今となっては考えられないことですが、この「ルパン三世 カリオストロの城」は劇場公開時には不入りで早々に公開が打ち切られてしまった映画です。
（当時放送中の“赤ジャケ”の新ルパンでははなく、第１期ＴＶシリーズの“青ジャケ”で、設定も第１期から多く流用したこと、また、ＴＶシリーズの「その後」の設定で、妙に「枯れて」、お行儀のいいルパンにＴＶシリーズのファンが馴染めなかったことなどが原因でしょう）
ただ、その面白さは文句なし。
「ルパン三世」のファンだけでなく、広くアニメファンの心を掴んだ本作は、所謂「ＴＶマンガ」の枠を超え、アニメファン層を拡大させる立役者となりました。
また、本作は、東京ムービーの若手スタッフの育成をも目的としており、準備期間の短さから新しい技法は盛り込まれていないものの、その巧みなアニメーション技法は多くの製作者に手本とされ、公開後に出版された絵コンテ集はアニメ製作の教科書となったと言われます。
今回、その名作を映像のデジタルリマスタ化と音声のドルビー５．１ｃｈ化で、現在の大スクリーン上映に耐えるようにしたものです。
幾度となく観た映画ですし、如何に傑作とは言え、３５年前の映画、粗が目立つのでは？と心配して見始めたのですが、これがまるで気にならず、冒頭から物語に引き込まれました。
また、リフレッシュされた映像は美しく、まるで、これまで観たものを頭の中で美化していたそのままがスクリーンに映し出されるようで、これには文句がある訳もありません。高精細な映像は、確かにその「粗さ」を露わにしてしまうのですが、それも手書きの「味」と思えて来るほどです。
もっとも、宮崎駿脚本だけに、物語は滅茶苦茶で、特にマクガフィンのいい加減さと来たら、ヒッチコックが観たらあきれ果てるようなもの。何しろ、この物語、ルパンには“動機”がないのですから。
そんな欠点も判っていて、過去１０回以上観ていて、それでも尚、抜群に面白い。
これが天才の仕事と言うものか・・・若き日の宮崎駿による、才気溢れる冒険活劇の傑作。これを再びスクリーンで観る事が出来る、と言うことに文句のつけようもありません。
それにしても、あれからもう３５年。しみじみと、自分も年を取ったものだと思います。
（２０１４年 ５月１６日 ＴＯＨＯシネマズ日本橋にて）
（作品データ）
■監督
宮崎駿
■出演
ルパン三世 ・・・ 山田康雄
次元大介 ・・・ 小林清志
十三代目 石川五右衛門 ・・・ 井上真樹夫
峰不二子 ・・・ 増山江威子
銭形警部 ・・・ 納谷悟朗
クラリス・ド・カリオストロ ・・・ 島本須美
（その他のキャスト）
石田太郎 宮内幸平 永井一郎 山岡葉子 常泉忠通 梓欽造
平林尚三 寺島幹夫 野島昭生 鎗田順吉 阪脩 松田重治
峰恵研 緑川稔 加藤正之
■コピー
不朽の名作、カリオストロの城がデジタルリマスター版になって帰ってくる！
■Ｌｉｎｋ
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