| ＷＯＯＤ ＪＯＢ! 神去なあなあ日常 |
これは、三浦しをんの小説「神去なあなあ日常」を、「ウォーター・ボーイズ」や「ハッピーフライト」の矢口史靖監督が映画化したもの。
映画のメインタイトル「ＷＯＯＤ ＪＯＢ！」とはなかなか傑作で、いかにも矢口監督の映画らしいし、内容を的確に伝えるものだと思いました。
（原題の「神去なあなあ日常」では内容判りませんからね……）
大学受験に失敗し、同じ大学に通うと約束していた恋人にもフラれた平野勇気。
浪人する気も就職する気もない勇気は、ヤケ酒の末にふと手にしたパンフレットの表紙を飾る美女に釣られ、1年間の林業研修に参加することとした。
地元にいては、大学生になった友人らと顔を合わせる機会もある。ここは思い切って地元を離れるのも悪くはない……と、軽い気持ちで向かった研修場所は、携帯電話も繋がらない山奥の村で……
これまで「男子がシンクロナイズドスイミング」、「女子高生がジャズ」、「老人とロボット開発」と言う、異色な組み合わせを映画にして来た矢口史靖監督が、この映画で取り組むのは、今時の少年が、林業を通じて日本の伝統文化に触れる、と言うもの。
映画としては、なかなか盛り沢山で、異色な組み合わせが生む面白さに加え、林業と言う職業を紹介、更に、ふらふらしている主人公が自分の居場所を見つける青春ものでもあり、恋愛ものとしての要素まであります。
矢口史靖監督には「ハッピーフライト」と言う航空運送事業に携わる人々を描いた映画がありますが、この映画が描く林業は、一般の人にとってあまり馴染のない世界。それ故に、“お仕事紹介”だけでは映画を引っ張るのは難しいと見て、こう言う構成になったのでしょうが……個人的には、もうちょっと“お仕事紹介”に振って欲しかったように思いました。
主役の勇気役は、染谷将太。でも、染谷将太が“普通の少年”と言うのはちょっと勿体ないな、と。
そして、問題はむしろヒロインの長澤まさみで、トラウマを抱えて素直に勇気に接する事が出来ない、屈折した役にはちょっと合わないし、染谷将太との年齢差も気になります。
個人的には、染谷将太なら、相性のいい二階堂ふみを持って来て欲しかった所。“ツンデレ”キャラも、二階堂ふみの方が上手く演じられると思うのですが……
また、特筆すべきは、先輩のヨキを演じた伊藤英明。
鍛え上げられた肉体は、野生児・ヨキ役にぴったりだし、身体能力の高さを活かしてチェンソーを鮮やかに操り、走行中のトラックを追いかけて飛び乗る、と言う演技をノースタントで演じるなどの見せ場もあります。勇気が自然に憧れるような、格好のいい現代の“木こり”を体現しています。（海の男・伊藤英明は、高所恐怖症の気があると言うのですが……まるでそうとは見えない！）
馴染みのない題材ながら、盛り込まれた小ネタで笑わせて物語を引っ張って行く手腕は手慣れたもので、“よそ者”の勇気が成長と共に村で居場所を掴んで行く辺りは青春ものの王道でしょう。
“山”が神様の居場所だ、と言う日本の山岳信仰が自然に理解出来るような描写もいいし、林業と言うものを真摯に描く姿勢には好感が持てます。
そして、クライマックスには、伝統の大祭に重ねたスペクタクルまで用意されるてんこ盛りの内容。
最後には爽やかな感動のある、青春・お仕事映画の傑作。これはよい映画でした。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
■出演
平野勇気 ・・・ 染谷将太
石井直紀 ・・・ 長澤まさみ
飯田ヨキ ・・・ 伊藤英明
（その他のキャスト）
優香 西田尚美 マキタスポーツ 有福正志 近藤芳正 光石研 柄本明
■コピー
少年よ、大木を抱け。
■Ｌｉｎｋ
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