| ラヴレース −ＬＯＶＥＬＡＣＥ− |
１９７２年に公開された「ディープ・スロート」は、低予算のポルノ映画でありながら、「タイタニック」にも匹敵する興行成績を上げ、社会現象とさえ言える程のブームを巻き起こしました。
主演女優のリンダ・ラヴレースは、女性も能動的に性を享楽しよう、と言うセックス革命のシンボルに祭り上げられますが、大ヒット間違いなしと言われた続編は遂に製作されず、リンダが次に人々の前に現れるのは、女性の権利を訴え、暴力と抑圧からの解放を謳う活動家となった姿でした。
この映画は、この「ディープ・スロート」を中心に、リンダ・ラヴレースの半生を描く伝記映画です。
フロリダの厳格なカトリック家庭に育ったリンダ・ボアマンは、ある日、バーを経営するチャック・トレイナーと言う男と出会って恋に落ちる。リンダは、駆け落ち同様に家を飛び出し、チャックと結婚。
だが、幸せな時間は長く続かなかった。経営するバーでの違法売春で逮捕され、借金を抱えて行き詰ったチャックは、リンダをポルノ映画に出演させようとする。
映画製作者たちは、演技経験０のリンダに一度はＮＧを出すが、チャックがリンダに仕込んだある“技”に目を見張って・・・
映画は、リンダとチャックの出会いに始まり、「ディープ・スロート」の成功までを描いてから、時間軸を巻き戻し、２人の結婚からあらためてリンダの視点で物語を描き直します。
この描き直された物語は、「ディープ・スロート」出演以後、表舞台から姿を消していたリンダ本人が、６年後に登場し、自叙伝の中で告白した、ＤＶ（家庭内暴力）と搾取の物語になります。
結婚当初から、チャックに暴力で支配されていたリンダですが、敬虔なカトリックであったが故に、「妻は夫に従うもの」との教えによってチャックに従い事しか出来ず、まして離婚などは論外でした。
ポルノ界のアイドルに祭り上げられたリンダは、淫蕩であったからそうなったのではなく、カトリックの教えと、親の言う事をよく聞く「いい子」だったから、そうなってしまったと言う皮肉な事実が描かれます。
また、６億ドルもの興行収入を上げた「ディープ・スロート」ですが、リンダのギャラは僅か１２５０ドルに過ぎなかった（しかも、チャックの懐に入り、リンダには１セントも渡されなかった）と言う、搾取の酷さにも驚かされます。
テーマとしては興味深いものがあり、社会的弱者の権利回復と言うのも、昨今の映画として、トレンドに乗ったものになっています。
ワンポイントでカメオ出演している大物もいたりして、キャストは意外と豪華。アマンダ・サイフリッドは、大胆なヌードも辞せず（この役柄では仕方ない）相当思い切って、この“汚れ役”に取り組んでいますし、また、シャロン・ストーンが今までにない役柄を演じているのも見逃せません。
結構、コストもかけて７０年代を再現しているのもいいのですが、惜しいのは、いくら成人指定になるとは言え「ディープ・スロート」でリンダ・ラヴレースを有名にした“技”を描写するにはいかず、映像のインパクトとして弱くなってしまったこと。さすがに、予備知識がないと、「ディープ・スロート」が何故、あそこまでヒットしたのかが判らないでしょう。
また、同じ物語を、視点を変えて２度描く、と言う構成もあまり成功しているとは思えず、映画としてのディティールの描き込みも不足し、主張も弱くなってしまっているように思えました。
（２０１４年 ３月３０日 シネマ・ベティにて）
（作品データ）
■監督
ロブ・エプスタイン／ジェフリー・フリードマン
■出演
リンダ・ボアマン／リンダ・ラヴレース ・・・ アマンダ・セイフリッド
チャック・トレイナー ・・・ ピーター・サースガード
（その他のキャスト）
ハンク・アザリア ウェス・ベントリー アダム・ブロディ ボビー・カナヴェイル ジェイムズ・フランコ
デビ・メイザー クリス・ノス ロバート・パトリック エリック・ロバーツ クロエ・セヴィニー
シャロン・ストーン ジュノー・テンプル
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私をスターにした、最悪で華麗な１７日間
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