| 愛の渦 |
これは、演劇ユニット「ポツドール」の代表的作品である同題の舞台劇を、「ポツドール」主宰の三浦大輔が自ら映画化したもの。
乱交パーティーに集う男女の姿を通じ、人間の本質を剥き出しにして行こうとするドラマです。
六本木の高級マンションで乱交パーティーが催されていた。
男性２万円、女性２０００円を払えば誰でも参加出来るパーティーに、現在ニートの加藤勇は参加した――親からの仕送りをこんな事に使ってしまって、後ろめたく思いながら・・・
今晩、集まったのは、男女４名ずつの合計８名。初参加の者が殆どと言う事もあり、何となく気まずい雰囲気で、パーティーは始まったが・・・
１２３分の映画の中で、主人公・加藤を演じた池松壮亮が服を着ていた時間が僅か１８分半、と言う事が宣伝コピーにも使われていますが、それも納得。冒頭１０分ほどでパーティーが始まってから、映画はマンションを出る事なく、延々と乱交パーティーの様子を描いて行きます。
（まぁ、実際、俳優は殆どのシーンでバスタオルを身体に巻いているのですけどね）
映画やＴＶドラマ、ＣＭなどでも活躍している、名前の売れている俳優らに、ほとんどアダルトビデオ並みの激しいセックスシーンを演じさせているのは、確かに見物。特に、地味な女子大生役の門脇麦が見せる、清楚で控えめな雰囲気なのに性交時に大きく乱れる姿のギャップには意表を突かれます。
しかし、そんな描写がこの映画の全てではありません。（と言うか、それで全てだったらほんとアダルトビデオと同じですが）
面白いのは、やはり、そこで繰り広げられる人間ドラマ。
密室での会話が中心となるそれは、やはり舞台戯曲らしい部分ではありますが、これは確かに面白い。
最初、ぎこちなかった会話が、１度の性交の後は打ち解けた雰囲気になっており、そして、２回目の後は、更に生々しく感情をぶつけ合い、衝突する。
（この様子を、池松壮亮は「みんな感覚が変になり、どんどん動物的になって行った」と回想しています）
そこに、飛び入りのアベックが入って来て、雰囲気をリセット、更にアベック同士ならではの感情のせめぎ合いを見せるのも面白い所です。
デブで不細工な彼女を連れた男は、当初、倦怠期の空気を変えるつもりで参加するのですが、彼女のルックスを嘲笑されて、乱交への気分を萎えさせてしまう辺りの描写は、その後の伏線にもなっていて、なかなか巧妙な展開、と思いました。
その描写でも判るように、この映画で描かれるのは、基本的には男の痛さ。
虚構と現実の折り合いを上手くつけられる女に対し、男は、例え風俗でさえ「一夜の恋」などとロマンチックな夢を抱いてしまう時がある・・・そんな痛さを映画はえぐり出して行くのです。
先のアベックのエピソードを伏線に、ラストシーン、物語を判り易くする為に劇場版で新たに追加されたエピソードで、甘い幻想を叩き壊して行く描写の見事さ――確かに、主人公の加藤は、現実と虚構の折り合いをつけられないからこそ、ニートなのですが――この展開は、さすがに痛い所を衝かれました。
（２０１４年 ３月 ２日 川崎 チネチッタにて）
（作品データ）
■監督・脚本
三浦大輔
■出演
加藤勇（ニート） ・・・ 池松壮亮
（女子大生） ・・・ 門脇麦
（サラリーマン） ・・・ 滝藤賢一
（保母さん） ・・・ 中村映里子
（フリーター） ・・・ 新井浩文
（ＯＬ） ・・・ 三津谷葉子
（童貞） ・・・ 駒木根隆介
（常連） ・・・ 赤堀セリ
（カップル・男） ・・・ 柄本時生
（カップル・女） ・・・ 信江勇
（店長） ・・・ 田中哲司
（店員） ・・・ 窪塚洋介
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