| 土竜の唄 潜入捜査官 ＲＥＩＪＩ |
これは、高橋のぼるの同題の人気コミックスを、三池崇史と宮藤官九郎がタッグを組んで映画化したもの。
交番勤務の巡査、菊川玲二。警察学校史上最低の劣等生で問題警官の彼は、素行不良を理由に、署長にクビを宣告されてしまう。
だが、それは表向きの話。
持ち前の正義感に加え、ガッツを買われた玲二は、合成麻薬を密売する暴力団・数寄矢会の会長・轟周宝を挙げるため、“モグラ”と呼ばれる潜入捜査官となるよう密命を受けたのだ。
厳しい適性試験をパスした玲二は、数寄矢会系列のカジノに乗り込んでひと暴れ。そこで数寄矢会阿湖義組の若頭、クレイジーパピヨンの異名を持つ日浦匡也に気に入られ、義兄弟の契りを交わすことになるのだが・・・
この物語の面白さは、伝統的なヤクザ社会に、いかにもな今時の若者で、尚且つ警官と言う異分子が入り込んでひっかきまわす面白さにある（特に親子縁組みの場での展開はその真骨頂）と思うのですが、なるほど、この内容だからこその三池崇史＆宮藤官九郎のタッグか、と納得。
監督の三池監督は、ヤクザの描写は手慣れたもの、コミックスやアニメの実写化にも定評がありますし、宮藤官九郎の持ち味のギャグと、自然な台詞回しもさすがで、確かに面白いものになっています。
特に、コラージュ手法によるアニメ的手法で描かれた映画冒頭部、そして、玲二が潜入するまでの展開は、ハイテンションかつスピーディで思わず引き込まれました。
ただ、物語中盤以降は勢いが失われ、在り来たりのアクションコメディになってしまったのが残念ですが・・・
また、流血に人体破壊を伴う暴力、濃厚なセックスシーンに、薬物まで登場する内容なのに、この映画、映倫の規制に一切ひっかからず。どうやら「これはマンガ」なので現実味なし、と言う事で押し切ったと言うのですが、映倫基準は本当に判らないなぁ。
出演者もなかなか豪華。その中で、主役の菊川玲二を演じる生田斗真は、激しいアクションは勿論、全裸で洗車機にかけられるシーンに、キャラを崩し兼ねない変顔まで、正に身体を張った熱演。
チョイ役にも名の知られた俳優を起用し、しかも、岡村隆史や上地雄輔などは、コミックスのキャラクターを再現し、普段の素顔からかけ離れた異相で登場します。
日浦匡也を演じた堤真一はハマり役とは思いますが、何処かズレた武闘派ヤクザと言う役柄は「地獄でなぜ悪い」のヤクザ役と被ってしまって新鮮味がなかったのが惜しい。
原作コミックスは未読ですが、現在３９巻を刊行中の大長編で、映画は冒頭から半分程度までに相当するエピソードになるようです。
まぁ、無理して完結させてダイジェスト版のようにするよりは、続編の含みを持たせて敢えて完結させず、評判がよければ続編を作ろう、と言う狙いは判ります。
ただ、潜入捜査の目的である数寄矢会会長・轟周宝に手が届かないままに、映画は終わってしまいます。
確かに、原作コミックスも完結していないのですから仕方ない、と言えばそうなのですが、刊行中コミックスのてこ入れの為のＣＭ映像的に見えてしまうのは仕方ないことでしょうか。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
■出演
菊川玲二 ・・・ 生田斗真
日浦匡也 ・・・ 堤真一
轟周宝 ・・・ 岩城滉一
（その他のキャスト）
仲里依紗 山田孝之 上地雄輔 岡村隆史 斉木しげる 伊吹吾郎 渡辺哲
的場浩司 佐藤寛子 南明奈 彩也子 尾崎ナナ 吹越満 遠藤憲一
星野あかり 七海なな 皆川猿時 大杉漣
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