新しき世界
これは警察の潜入捜査官を主人公にした、韓国のクライム・サスペンス。
監督は、「悪魔を見た」の脚本を担当したパク・フンジョン。日本に先行して公開された北米では高い評価を受け、既にハリウッドでのリメイクも決まっているのだとか。
韓国経済界で、新勢力として台頭して来たゴールドグループ。その実態は、犯罪組織“ゴールド・ムーン”の表の顔だった。
その会長が事故死した事から、組織を二分する跡目争いが始まる。生まれを活かして中国に進出する、チョン・チョンら華僑系と、古参のイ・ジュングら韓国系が対立し始めたのだ。
ソウル警察のカン課長は、組織に８年も潜り、今や華僑系の幹部となったイ・ジャソンに潜入捜査の継続を命じるとともに、組織壊滅を狙う“新世界”プロジェクトをスタートさせる。
妻の妊娠を機に、組織を抜け復職したいと言うイ・ジャソンの願いは退けられ、彼はより危険な任務を与えられて……
この映画、「インファナル・アフェア」などと同様の潜入捜査官もの。
映画としては重いタッチで、凄惨な拷問シーンに始まり、金属バットを振るう韓国ヤクザならではの暴力シーンも目立ちます。そうしたバイオレンス描写あり、潜入捜査ものならではの息詰まるようなサスペンスあり。そんな映画にもコミカルなシーンを盛り込んでしまうサービス精神は、やはり韓国映画ならでは、と言う所でしょうか。
世界中に進出し、商魂逞しく強かに生きる華僑系の人々が最も暮らし難い国が韓国なのだそうです。
世界のあちこちにある中華街も韓国には見られず、華僑系の人々は差別され、ひっそりと生きて行くしかないのだとか。
そうした背景を理解しないと、この映画の意味する所は判らないように思います。
昨年公開された「悪いやつら」は、韓国の“一族の絆”を頼りに裏社会でのし上がっていく男を描いた映画でしたが、この映画は、そうした“絆”を持たない者たちの物語。
こうした極めて土着的な題材を元に描かれる物語はなかなか興味深いものがあります。
警官でありながら、「華僑だから」と潜入捜査を命じられたイ・ジャソン。そして、裏社会においても差別され、祖国・中国に活路を見出すしかなかったチョン・チョン。
彼らは、その同胞意識によって強く結びついています。
跡目争い、そして、潜り込んだ警察の犬を焙り出す中で、チョン・チョンが真実を知った時の行動と、彼の想いを知ったイ・ジャソンの決断には驚かされます。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
パク・フンジョン
■出演
イ・ジャソン ・・・ イ・ジョンジェ
チョン・チョン ・・・ ファン・ジョンミン
カン・ヒョンチョル ・・・ チェ・ミンシク
（その他のキャスト）
パク・ソンウン ソン・ジヒョシヌ チュ・ジンモ チェ・イルファ チャン・グァン キム・ビョンオク
■コピー
“父”への忠誠か、“兄”との絆か。
■Ｌｉｎｋ
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