| ウルフ・オブ・ ウォールストリート |
これは、９０年代のウォール街で、その貪欲さと悪辣な手腕から「狼」と呼ばれた男、ジョーダン・ベルフォートの伝記映画。
監督は、この種の実録伝記映画を得意とするマーティン・スコセッシ。
１９８７年、２２歳のジョーダン・ベルフォードは野心と共にウォール街の証券会社に入社。
欲望の渦巻く金融市場はたちまちのうちに彼を魅了するのだが、その直後、“ブラックマンデー”の株価崩壊により、会社は破綻し、彼は失業してしまう。
生活のために田舎の証券会社で働くことになったベルフォートは、ウォール街仕込みの手腕で頭角を示し、ド素人にクズ株を売りつけて荒稼ぎ。数年後には、怪しげな仲間たちと投資会社を設立、富裕層に優良株と抱き合わせにクズ株を売ると言う手法により、会社設立より数年で年収４９００万ドルを稼ぐまでになった。
糟糠の妻を捨てて若くて美人の妻を娶り、豪邸にクルーザー、酒とドラッグ浸りでパーティー三昧の毎日・・・栄華を極めたように見えるベルフォートだが、その悪辣な手法に、証券取引委員会どころかＦＢＩまでが目をつけて・・・
この映画で、ジョーダン・ベルフォードを演じるのは、レオナルド・ディカプリオ。既に４０歳に近いのですが、持ち前の童顔で爽やかな笑顔を見せれば、なるほどまだ２０代に見えなくもありません。
スコセッシと組んで、今度こそ、と悲願のアカデミー賞を狙っているディカプリオは、大変な熱演を見せており、さすがにそろそろオスカーを獲らせて上げたいところ。
周りを固める俳優にも抜かりなく、ベルフォートの相棒、ドニーを「マネー・ボール」のジョナ・ヒルが印象的に演じ、ベルフォートに証券ビジネスの手ほどきをする上司役のマシュー・マコノヒーは、出番こそ少ないのですが、これまた強烈な印象を残す怪演を見せています。
また、今作のヒロイン、ナオミ役のマーゴット・ロビーは美貌と抜群のスタイルに加え、大胆な脱ぎっぷりと艶技で、注目必至です。
この映画、日本では成人指定のＲ１８。なるほど、スコセッシ＋ディカプリオと言う、紛れもないＡ級映画なのに、これは、とんでもなくエロ、と言うか下品。
裸とセックスはこれでもか、と言うほどで、ドラッグをキメての乱痴気騒ぎも繰り返されます。ディカプリオも映画でここまで腰を振っているのは珍しいでしょう。
下品で、騒々しくて、とんでもなくエネルギッシュ。
なるほど、これぞ“バブル”で、日本でも、“その時代”を知っている人には、その雰囲気には同じものを感じるのではないでしょうか。
特徴的なシーンは、ベルフォートが社員相手に行う演説。
居並ぶトレーダーを鼓舞し、金儲けに奔走させる、熱く、激しい演説は、まるでロックコンサートのようでもあり、見方を変えればヒトラーのようでもあります。
これが事実に基づくのであれば、ジョーダン・ベルフォートと言う人物が、ある種の天才であったことに疑いないように思えました。
カメラ目線で観客に語りかけるディカプリオに、最初は引くかもしれませんが、ハイテンポに捲られてその世界に入り込むと、待っているのはジェットコースター。貪欲な向上心に引っ張られて昇りつめたら、あとは突っ走るだけ。確かに面白い映画で、３時間と言う長丁場も、だれることはありません。
ただ、そんな熱狂の中でも巨匠・スコセッシはクールに人間を描きます。
描き出される人間の浅ましさと愚かさ。それを笑ううちに、やがて気づかされます。
何時の時代も、どんな時でも、人を動かし、踊らせるのは時代の空気と、欲望だと言うことに。
欲望に正直で、時代の空気に流されることに抵抗しなければ、誰しもがベルフォートになる可能性がある、と言うことを・・・
（２０１４年 ２月 ７日 横浜・ムービルにて）
（作品データ）
■監督
■出演
ジョーダン・ベルフォート ・・・ レオナルド・ディカプリオ
ナオミ・ベルフォート ・・・ マーゴット・ロビー
ドニー・アゾフ ・・・ ジョナ・ヒル
（その他のキャスト）
マシュー・マコノヒー カイル・チャンドラー ロブ・ライナー ジョン・バーンサル ジャン・デュジャルダン
ジョン・ファヴロウ ジョアンナ・ラムレイ クリスティン・ミリオティ クリスティーン・エバーソール
シェー・ウィガム カタリーナ・キャス P・J・バーン イーサン・サプリー
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貯金ゼロから年収49億円 ヤバすぎる人生へ、ようこそ。
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