ザ・イースト
これは、環境テロリスト団体への潜入捜査を描いたサスペンス映画で、フォックス・サーチライトの２０周年記念作品の第二弾。
主演は、ゴールドマンサックス社から映画界に転職したと言う異色の経歴を持つ女優、ブリット・マーリング。垂れ目に愛嬌のある、美人と言うよりも可愛らしい感じの女性ですが、彼女は、脚本も手掛ける才女であり、この映画では製作にも名を連ねているなど、相当入れ込んでいるようです。
警備会社ヒラー・ブルードは、大手企業を顧客に、特殊な保安サービスを提供して業績を伸ばしている。それは、企業に対する脅迫やテロなどを、独自の捜査により未然に防止する、と言うものだった。
ジェーンは、安全を気遣う恋人の願いもあってＦＢＩを退職。ヒラー・ブルードで働く事になったのだが、そこでの仕事は、企業相手にたびたびテロを行っている環境保護団体「ザ・イースト」への潜入調査だった。
サラという偽名を名乗り、「ザ・イースト」への潜入に成功したジェーンだったが・・・
日本でも「グリーンピース」や「シー・シェパード」などの動物保護団体の犯罪紛いの妨害工作を行っているのが報じられていますが、同様に、環境保護団体も過激な団体はテロ行為をも辞さない、と言うことになっているのも事実ですし、企業側の防御策もエスカレートしているのが現実。
（コカ・コーラは要人誘拐に対し会社で傭兵を雇って奪還作戦を敢行、マクドナルドも環境保護団体の動向を探るためにスパイ活動を行っていたそうです）
ブリッド・マーリング自身、ゴールドマンサックス時代にそうした事を見聞きしていたのではないでしょうか？
そうした現実味のある背景、そしてブリット・マーリング自身、監督と共にアナーキストやホームレスと生活を共にし、実際にゴミ箱漁りまでして役作りに励んだ、と言う役作りも生きています。
潜入捜査のやり方もなかなかリアルで、携帯電話を仕込むよう加工したトレッキングシューズを、食洗機で洗い倒し、靴底を削って年期を経ているように見せかけるなどの細かな描写がリアリティを盛り上げます。
ただ、そうした細部の描写はいいのですが、この映画、サスペンス描写がいまいちで、“手に汗握る”ような盛り上げに欠けるのが惜しい。
また、女性らしい、と言えばそうなのかも知れませんが、中盤以降で感情論に走る描写が多く見られ、ジェーンが「ザ・イースト」に気持ちが傾いて行くのを理詰めで見せられなかったのはちょっと引っかかった部分です。
それにしても、如何に環境保護とは言え、テロはテロであり、立派な犯罪。それに「理がある」としたのはなかなか大胆。
確かに、ジェーンは警備会社の社員で、依頼主の利益を護るのが仕事であり、政府機関のように社会正義の為に働いている訳ではありません。また、その依頼主が犯罪的な環境汚染を行っている、とした事で、「ザ・イースト」の行為に正当性を感じられるようにはしてはいるものの、それにしても思い切ったもの。
それも、インディペンデント色の強いフォックス・サーチライトならではのことだと思いますが・・・
（２０１４年 ２月 １日 ＴＯＨＯシネマズららぽーと横浜にて）
（作品データ）
■監督
ザル・バトマングリ
■出演
ジェーン／サラ ・・・ ブリット・マーリング
ベンジー ・・・ アレキサンダー・スカルスガルド
（その他のキャスト）
エレン・ペイジ パトリシア・クラークソン ジュリア・オーモンド
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