これは、「ドライヴ」のニコラス・ウィンディング・レフン監督が、再びライアン・ゴズリングと組んで作ったバイオレンス映画。

　タイ・バンコクでムエタイクラブを経営していたビリーとジュリアンのアメリカ人兄弟。
　ある夜、試合の興奮醒めやらない中で、サディストでロリコンのビリーが１６歳の娼婦を惨殺し、その報復として彼女の父に殴り殺された。少女の父に報復させるように仕向けたのは、街を支配する元警官のチャン。
　兄の報復をしようとしたジュリアンだが、事情を知って男を許してしまう。
　だが、ビリーの死にアメリカから飛んで来た兄弟の母親、クリスタルはそれに満足出来ず、人を雇って男を殺し、更にチャンにまで報復の銃口を向けるのだが・・・

　この映画、毒々しいまでの色彩に彩られた映像と、不安感をかき立てるような音楽と演出の生み出す禍々しい雰囲気による、独特のムードを持っています。
　その映画の中で、タイトルにあるように“神”として存在するのは、チャンというタイ人の元警官。多くの部下を引きつれて、自らが決めた刑の執行に躊躇いも迷いも見せない執行者で、刑の執行を終えるとカラオケで一曲歌うのが約束。いつも無表情で、その表情は常に変わりません。

　映画内で、その“神”に挑むのが、ライアン・ゴズリングが演じたジュリアンになります。
　「ドライヴ」の主人公同様、穏やかな表情の向こう側に、底知れない“何か”を秘めている事を感じさせる男です。
　映画の終盤、母を殺されたジュリアンは、その復讐の為にチャンに立ち向かうのですが……結果として、その“何か”は噴出する事なく終わってしまいます。
　これは、ジュリアンの復讐心が“借り物”でしかなく、更にはマザコンでインポ――タイ美人のガールフレンドがいるのだけど、彼女に自慰をさせるだけで、性行為には及ばない――と言う設定から暗示されていたように思いました。ジュリアンは結局、己の内にに潜むものを解き放つ事が出来ない男なのだ、と……

　主人公の暴力の発揮がなく、バイオレンス映画としては、ちょっと食い足りない部分もありましたが、それでもこれはなかなかの映画。この雰囲気を感じるだけでも価値あるものと思います。
　また、この映画、この内容であれば、日本を舞台としてもよかった（チャンが刀の使い手である事もあるし）ように思えます。
　その場合、舞台は、バンコクと並ぶ夜の街、歌舞伎町。チャンの役は、ビートたけしでしょうか。
　

　（年　月日　にて）

（作品データ）

　■監督

ニコラス・ウィンディング・レフン　

　■出演

　ジュリアン　・・・　ライアン・ゴズリング

　クリスタル　・・・　クリスティン・スコット・トーマス

　チャン　・・・　ヴィタヤ・パンスリンガム

（その他のキャスト）
　ラター・ポーガーム　　ゴードン・ブラウン　　トム・バーク

　■コピー

その復讐は 神への挑戦　

　■Ｌｉｎｋ

http://onlygod-movie.com/

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