ゲノム ハザード
天才科学者の５日間
これは、サントリーミステリー大賞読者賞を受賞した司城志朗の同題のサイエンスミステリ小説を日韓合作で映画化したもの。
主演は西島秀俊で、主要キャストも日本人俳優が占め、舞台の多くも日本になりますが、監督のキム・ソンスを始めスタッフは韓国側が主で、その結果、出来上がったのは、日本を舞台にし日本人が登場しながら韓国映画風と言う、奇妙な雰囲気を持つ映画になっています。
また、舞台を日韓に跨がせることで、日本では実現が難しい派手なカーチェイスは韓国で行うなどして、限られた条件の中で映画を派手に盛り上げようとするのも韓国流でしょうか。
その日は彼の誕生日だった。
デザイン事務所でデザイナーとして勤めている石神武人が、帰宅したマンションで対面したのは新妻の遺体だった。
突然の事に動転する石神。そこに、何と目の前で遺体となっている妻から電話がかかって来た・・・
この映画、導入部で描かれる「遺体となっている妻からの電話」と言う状況は、謎としては申し分なく、更に謎が謎を呼ぶ展開はミステリーとして定番ではあるものの、その先の展開に期待を抱かせました。
しかし、この映画、そこからの展開がよくないのです。
次から次に登場人物が現れ、まともな伏線もなしに新たな情報が提示される内容に観客は戸惑うばかり。謎解きになっても同様で、確かに予想もしなかった展開にはなるのですが、推理をする材料の提示もないのではミステリーとしては失格でしょう。
確かに、主人公の「記憶」がキーになる作品であり、錯綜する記憶を解きほぐす物語であるために、主人公の視点だけでは混乱してしまうのも当然。
作劇の基本としては、こうした場合は物語に整合性を与え、解説を行う役を置くものです。この物語では、石神に同行することになる韓国人ジャーナリストのカンをその役割に置いているものの、映画はその設定を有効に活かしているとは思えません。
恐らく原作小説ではその辺りを上手くやっているはずですが・・・映画の場合、カンが韓国語で解説しても日本語版では字幕ばかりになってしまって理解を得られないとでも懸念したのでしょうか？何にせよ、難解と言うより支離滅裂な映画になってしまったのは残念としか言い様がありません。
西島秀俊は激しいアクションにも挑むなど熱演を見せています。しかし、サービスカットと思しき上半身裸のシーンで見せた鍛え上げられた肉体は、デザイナーにも科学者にも見えないのが痛い。
そんな役作りにもちぐはぐさを感じる映画でした。
（２０１４年 １月２６日 横浜ブルク１３にて）
（作品データ）
■監督
キム・ソンス
■出演
石神武人／オ・ジヌ ・・・ 西島秀俊
カン・ジウォン ・・・ キム・ヒョジン
（その他のキャスト）
真木よう子 伊武雅刀 中村ゆり 浜田学 パク・トンハ
■コピー
彼は記憶を上書きされた。
■Ｌｉｎｋ
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