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これは、ＣＭ業界出身の監督、永井聡が、ＣＭフィルムの国際コンテストを舞台に描くコメディ映画。
大手広告代理店・現通の落ちこぼれ社員、太田喜一郎は、身勝手な上司のＣＭプロデューサー・大滝から彼の身代わりになってサンタモニカ国際広告祭の審査員をやってこいとの命令を受ける。
英語の苦手な太田は、同姓で英語の堪能な同僚（ただしギャンブル狂）を妻と言う名目で同行させる事にし、怪しい窓際族社員のアドバイスを受け、現地に向かった。
しかし、この仕事には更に無謀な課題が課せられていて・・・
業界の内情を描く映画は、知らない世界を覗き見る感があって面白く感じられるものですし、詳しく、リアルに出来れば、知的好奇心を刺激されて更に面白くなるもの。
（映画製作についての映画が面白いのはその好例でしょう）
この映画は、誰もが見ているＴＶ−ＣＭの世界を、ＣＭ製作出身で、その世界をよく知る、監督の永井聡と脚本の澤本嘉光は、業界ならではの裏話を交えて描きます。
宣伝部長の鶴の一声でＣＭに無茶な改変を加え、大手スポンサーに大口契約をちらつかされれば、これまたどんな無理も受けてしまう。
その無茶無理無謀を「何とかしろ」と押しつけられるのは、常に現場、そして若手社員と言う描写を、映画は爆笑を誘うギャグとして見せますが・・・これなど、相当煮え湯を呑まされて、溜まった恨み辛みの裏返しなのでは、と思ってしまいます。
また、キャストもかなり豪華ですし、ＣＭ畑出身の監督らしく、外国人起用を躊躇しない（それ故、日本映画としては異様な字幕の多さです）辺りもいい。
映画の中心は、サンタモニカ国際広告祭と言う架空の国際ＣＭコンテストとなります。
言葉も満足に喋れない外国に行って仕事をして来い、と言う状況、私自身も幾度か経験がありますが・・・そう言う体験からして見ても、主人公の太田、「落ちこぼれ社員」と言う設定ながら、その努力はなかなか立派なもの。クビが懸かっているからとは言え、自腹を切って同僚を通訳兼参謀役に仕立て、先輩社員から対応術を学ぶ・・・ここまでやるのですからね。
そして、コンテストで勝ち抜くための、あの手この手の票取り合戦の様子が面白おかしく描かれます。
ところが、ＣＭ界に憧れを抱いて入って来た太田は、周りから呆れられ、バカにされようとも、ひたむきに夢と理想を追い求めて行きます。
「いいものはいい、悪いものは悪い」――大人になれば、それを貫き通す事が難しい事は誰でも判ります。
だからこそ、バカ正直に、それを貫く太田の姿は不器用だけど格好よく見えますし、その理想を貫く事を誇りを持って成そう、と言う主張には、この映画を作った永井聡監督の中にも同じ想いがあるように思えました。
笑えるコメディでありながら、業界の裏を覗く面白さあり、製作者の熱いスピリットあり・・・内容は盛り沢山で、それでも情報過多にならず、巧みに張られた伏線も見事に回収。
痛快な逆転劇の後で、爽やかに締めたラストも気持ちよく、これは予想外に、と言うか予想を遥かに上回る素晴らしい出来。
世の中、決して捨てたもんじゃない。清濁合わせ呑み、だからこそ世の中は面白い・・・そんな風に思えるこの映画、多くの人に観て貰いたい傑作だと思います。
（２０１４年 １月１７日 ＴＯＨＯシネマズ上大岡にて）
（作品データ）
■監督
永井聡
■出演
太田喜一郎 ・・・ 妻夫木聡
太田ひかり ・・・ 北川景子
大滝一郎 ・・・ 豊川悦司
（その他のキャスト）
リリー・フランキー 鈴木京香 荒川良々 玉山鉄二 玄里 田中要次 風間杜夫
ジェイムズ・C・バーンズ ジョエル・オーエンズ チャド・マレーン ブンシリ スチュアート
エマ・ハワード クライヴ・デイヴィス ポール・トリプコニー ライアン・ドリース
マイケル・ポールズ カミラ でんでん 浜野謙太 伊藤歩 加瀬亮 木村祐一
あがた森魚 松本伊代 志賀廣太郎 柄本時生 福本清三 竹中直人
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