フィルス
これは、「トレインスポッティング」のアーヴィン・ウェルシュの同題小説をジョン・Ｓ・ベアード監督が映画化した もの。
この映画、日本では成人指定のＲ１８＋での公開となっており、エロティックさや、凄惨な残酷描写のある映画でもなく、警察もののコメディでどうして？・・・と思いましたが、これはなかなかとんでもない映画でした。
クリスマスも近い夜の街で、日本人留学生が殺害された。
事件の捜査を担当することになったのは、スコットランド警察のブルース・ロバートソン刑事。署内一の敏腕を自負する彼は、夫の出世を望む妻の為にも、事件解決の手柄でもって警部補昇格を確実にしようとしていた。
ブルースは、捜査を進めると共に、同僚を出世レースから蹴落とす裏工作に励むのだが・・・
主人公の周りにいるのは、映画マニアの脚本家志望と言う上司に、ゲイ、ネオナチ、ただの間抜け、と言う同僚たち、そしてバディを組むのは薬物中毒の新米と、ろくでもない連中ばかり。
そいつらを出し抜き、あるいは足を引っ張り、そして事件を捜査するブルースが、ハイテンションで描かれて行きます。
ブルースの余りの破廉恥さと下品な言動、そして警察の権威を失わしめるような不謹慎な描写に、ははぁ、これがＲ１８＋の原因だな、と思って観ているうち、少しずつ違和感を感じ出します。
何か変だな、と言う違和感・・・優れたホラー映画がそうであるように、この映画も少しずつ、日常の描写に、少しずつ、違和感を混ぜて来ます。
まさか、この描写は・・・と思っていると、そこから先、映画は、それまでと同じハイテンションとスピード感のまま、主人公・ブルースの世界を壊して行くのです。
――そう、ろくでもない連中ばかりに見えたのは、ブルースの意識で見ていたから。もし、周りの方が正常だったとしたら・・・？
詳しく書いてしまうとネタバレになってしまうのがもどかしいのですが、この映画は、ひとりの人間が壊れて行く過程と、その理由を見せつけるのです。
主演のブルースを演じるのは、ジェームズ・マカヴォイ。
ジェームズ・マカヴォイは、出演する映画の多くで凄惨な拷問を受けるなどしてボロボロにされますが、この映画でも、肉体的どころか、その精神までボロボロになって行く、と言う壊れっぷりを見事に演じます。
ラストは、彼を信じる母子の期待を裏切らないため、警官として死を選ぶブルースの姿。
静かながらもインパクトのある終劇でした。
（２０１４年 １月１１日 シネマ・ジャックにて）
（作品データ）
■監督
ジョン・S・ベアード
■出演
ブルース・ロバートソン ・・・ ジェイムズ・マカヴォイ
（その他のキャスト）
イモージェン・プーツ シャーリー・ヘンダーソン ジェイミー・ベル イアン・デ・キャステッカー イーモン・エリオット
エディ・マーサン ジム・ブロードベント ジョアンヌ・フロガット ナターシャ・オキーフ ポリアンナ・マッキントッシュ
デヴィッド・ソウル ケイト・ディッキー マーティン・コムストン トレイシー=アン・オバーマン ショーナ・マクドナルド
ロン・ドナキー ゲイリー・ルイス ブライアン・マッカーディ ジョン・セッションズ ジョイ・マカヴォイ
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