もらとりあむタマ子
これは、「苦役列車」の山下敦弘監督が、「苦役列車」でもヒロインを務めた前田敦子を主演として撮影した最新作。
大学は出たものの、就職もせず、実家に戻って自堕落な生活を送るタマ子。
甲府でスポーツ用品店を営むバツイチの父は、家事も放棄し、ひたすら食っちゃ寝のタマ子を苦々しく思いつつも店を切り盛りし、家事もこなしていた。
季節は秋から冬、そして春を迎え、タマ子は「自分を変えよう」と芸能プロダクションのオーディションに応募しようとするのだが・・・
オフビートな独特の雰囲気を持ち、一般ウケはしないものの一部に根強いファンのいる山下敦弘監督と、かなりの映画マニアの前田敦子の相性はよいようで、この映画でも、前田敦子から「苦役列車」同様、ＡＫＢ４８のエースで、アイドルの代表だった“あっちゃん”とは全く異なる表情を引き出しています。
ぼさぼさの髪にノーメイク、寝間着代わりのスエットでぐうたら、口を開けば不平・不満ばかり。アイドルの笑顔も封印し、無愛想な顔を見せつつ・・・それでも、小動物的なかわいさを生み出してしまう山下敦弘監督は本当に困ったものです。
（撮影時、山下監督は、前田敦子がかわいくて仕方なかったんだろうなぁ・・・と思わせるカットも、エンドロール後に収められています）
また、父娘の距離感や相互の感情などを、日常の細かな仕草を積み上げて示す描写には、なかなかリアリティがありました。
ただ、この映画、「苦役列車」ほどのドラマがなく、本当にあっさり仕立て。
ある意味、前田敦子のアイドル映画とも言える内容で、８０分にも満たない中編映画ながら、これはちょっと辛いものがありました。
ほぼ１年間と言う長いスパンを通して描くのは、娘の自立ではなく、意外にも父親の子離れ。
ぐうたらなタマ子が、漸く父親らしい言動を示した父に「合格」を出すシーンには苦笑させられました。
（２０１４年 １月 ８日 シネマ・ベティにて）
（作品データ）
■監督
■出演
坂井タマ子 ・・・ 前田敦子
（その他のキャスト）
康すおん 伊東清矢 鈴木慶一 中村久美 富田靖子 奈良木未羽 萩原利映
吉田亮 賀川舞亜 細江祐子 藤村聖子 伊藤沙莉 林和義 田中慎也
山内健司 服部竜三郎 佐田明
■コピー
坂井タマ子 ２３才 大卒 ただ今、実家に
帰省（寄生）中
■Ｌｉｎｋ
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