ばしゃ馬さん
と
ビッグマウス
これは夢を追うふたりの男女を描くヒューマンドラマ。
脚本家を目指し、努力を続けているものの、コンクールでは一次予選も通らない馬淵みち代。
同級生は概ね家庭に納まり、実家の旅館からは「結婚して家業を継げ」と言う無言の圧力もかかり、バイト生活も限界の３４歳だ。
友人のマツモトキヨコを誘って、あらためてシナリオスクールに通い始めた彼女は、一度も脚本を完成させたことが無いにも関わらず自分を天才と豪語する年下の青年、天童義美と出会って・・・
オリジナルドラマにこだわる監督・脚本の吉田恵輔によるドラマは、細かなディテールを疎かにせず、生活感のある描写で観客を引き込みます。
得てして、こうした青春ドラマではバイト生活のはずの主人公が妙に綺麗なマンションに住んでいたり、いい服を着ていたりするものですが・・・この映画はそうした部分が手を抜かずリアル。
だからこそ、ぎりぎりの生活で夢を追う暮らしが胸に迫ります。
みち代を演じた麻生久美子の上手さは期待通りですが、それ以上だったのは、“ビッグマウス”天童義美を演じた関ジャニ∞の安田章大。あるいはこれが素なのかも知れませんが、軽薄で口先だけのチャラ男が、生まれ変わる様を見事に演じています。
物語は、所謂、青春モノによくある「夢を追う」テーマなのですが、この映画の描くのは、夢に向かって「止まり方が判らなくなった」女と「走り方も判らない」男の悪戦苦闘の物語。
これを時に軽妙なタッチで仕上げてはいるのですが、これはコメディと言うにはいささか辛辣。
特に、一度でも夢を追った事のある人間（しかも、届かなかった場合）にしてみれば、これは決して笑う事の出来ない物語だと思います。
終盤の展開もなかなか厳しいもの。
実力勝負の世界では結果が全て。いかなる努力も、結果に結びつかなければ評価はされない、と言うことを突きつけます。
（この辺り、自ら脚本も手掛ける吉田恵輔には、全く容赦がないです）
この映画は、届かない夢を諦め、走り続けることを止める難しさを描いた、辛口青春ドラマなのです。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
吉田恵輔
■出演
馬淵みち代 ・・・ 麻生久美子
天童義美 ・・・ 安田章大
マツモトキヨコ ・・・ 山田真歩
（その他のキャスト）
岡田義徳 清水優 秋野暢子 松金よね子 井上順
■コピー
どうかこの人生が・・・シナリオ通りになりますように
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