レッド
ドーン
これは、１９８４年に公開された「若き勇者たち」をリメイクした、異色の戦争映画。
建国以来、本土に外敵の侵入を許した事のないアメリカが占領されてしまい、その中で、若者たちが侵略者に対してゲリラ戦を仕掛ける、と言う内容です。
シアトル郊外の小さな町が物語の舞台となります。
海兵隊員のジェドが休暇で帰省中のある朝、上空に無数の空挺部隊が現れた。
武装勢力の侵攻と言う危機に、ジェドは弟や友人と共に町を抜け出し、山中の小屋に身を隠すのだが・・・
この映画の最大の問題が、このアメリカ全土を占領する侵略者と言うのが北朝鮮（！）だと言うこと。
「ホワイトハウス・ダウン」のテロリスト設定でも無理があったのに、そんな北朝鮮がアメリカ全土占領など、正に荒唐無稽としか言い様がないものになっています。
勿論、これには裏があり、実は、当初のシナリオでは、敵は中国でした。
ただ、今やアメリカ映画の海外最大のマーケットであり、しかもスポンサーでもある中国を敵役に据えるなど、商売上、出来る訳がありません。
それでも、この映画、撮影終了までは敵を中国とする事で作業は進められており、撮影後に中国の国籍表示を全てＣＧで修正、台詞も差し替えたのだとか・・・その修正だけでも１億円以上の追加費用を要し、２００９年に撮影終了していたのにも関わらず、完成と公開がここまでずれ込んでしまいました。
まぁ、そんな商売上の都合で、設定が滅茶苦茶になってしまいましたが、それでも、これはなかなか見所もある映画です。
その最大のポイントはジェドの台詞、「イラクではオレたちはヒーローだったが、ここでは悪役だ」に示される、テロリズム肯定。
ジェドの戦法は、自動車爆弾に、検問所襲撃、対要人時限爆弾と、イスラム過激派ゲリラや、ベトコンそのまま。
テロリストを悪魔の如く非難するアメリカ人でも、国を占領されたら侵略国の軍隊に対してはテロリズムをも辞さずにゲリラ戦を仕掛けるのだ、と言う描写はなかなか辛辣で、痛烈な批判となっています。
また、当初、相手が中国だったとして見れば、現実に、アメリカに対するサイバー戦を仕掛けたと言われるだけに、大規模サイバー攻撃で、アメリカ軍機能を麻痺させ、中枢を弾道弾で叩いた後に、南米の反米国を橋頭堡に侵攻する、と言うシナリオにも一応の説得力はあります。また、アメリカ映画界が中国資本に乗っ取られそうになっているからこそ、中国の脅威に対する諷刺にもなっている訳で・・・当初のシナリオ通り、中国軍相手に戦う物語に出来なかった事が本当に惜しい映画だと思います。
ただ、終盤の展開にはがっかり。
米軍機能を麻痺させた秘密兵器の奪取、と言うクライマックスの活劇はいいとして、奪取に成功の後、ロシア軍特殊部隊（スペツナズ）に追跡されているのに、前線に拠点に止まり・・・それ自体は追っ手を混乱させる為の韜晦行動とも見られるのですが、そこで祝杯を上げている最中に襲撃されてしまう・・・と言うのには脱力させられました。
素人の若者たちが特殊部隊相手に互角以上に戦う、と言う無理な展開に説得力を持たせられないでいる部分も含め、こう言う詰めの甘さはどうにかして欲しかった所です。
（２０１３年 １０月９日 ＴＯＨＯシネマズららぽーと横浜にて）
（作品データ）
■監督
ダン・ブラッドリー
■出演
ジェド・エッカート ・・・ クリス・ヘムズワース
マット・エッカート ・・・ ジョシュ・ペック
エリカ・マーティン ・・・ イザベル・ルーカス
（その他のキャスト）
ジョシュ・ハッチャーソン エイロリアンヌ・パリッキ コナー・クルーズ ジェフリー・ディーン・モーガン
エドウィン・ホッジス ブレット・カレン アリッサ・ディアス ジュリアン・アルカラス ウィル・ユン・リー
フェルナンド・チェン マイケル・ピーチ
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