ワールド・ウォー Ｚ
これは、ブラッド・ピット主演の、希に見る“ゾンビ映画”大作。
製作費は１億９０００万ドル（一説には４億ドル？）。マイナー作品の多いこれまでのゾンビ映画なら数十本は作れようか、と言う大金を注ぎ込んだとのことですが・・・
国連捜査官の仕事を辞め、今は家族と共に平穏な日々を過ごしていたジェリー。
ある朝、いつものように妻と子供を送りにクルマで出掛けた途中、“それ”は突然遅いかかって来た。
辛くも危機を脱出、国連事務次長の助けによって、洋上の空母へと避難したジェリーは、そこで恐ろしい話を聞く。
謎のウィルスのパンデミックにより、国家体制は数日持たずに壊滅、このままでは９０日で人類は滅亡する、と言う。
ジェリーは、家族の保護を条件に、感染源を突き止め、有効なワクチンを開発すべく出発するのだが・・・
この映画、マックス・ブルックスによる同題の原作は、人々をゾンビにする謎の伝染病の封じ込め作戦を、作戦成功の後に振り返る、と言うスタイルの物語だそうです。（残念ながら原作は未読）
その独特のスタイルと、世界中を舞台とする壮大なスケール、それに各国が、その国様々なやり方でゾンビと戦う・・・と言う、こうした今までのゾンビものにはない面白さがあったようです。
ところが、この映画、物語を大きく改変、パンデミックの瞬間からを描く映画とし、ブラッド・ピットをヒーローとして描く映画にしてしまいました。
しかし、この改変、決して上手く行っているようには思えません。
序盤、危機に陥ったブラピ演じるジョニーら一家を国連が救助に行く、と言う展開そのものが不自然で、尚且つ、感情移入を削ぐものですし、物語は中盤に大きく規模を縮小、クライマックスは平凡なゾンビ映画並みの小さな物語になってしまいました。
（本当は、中盤のエルサレム陥落に匹敵するようなロシアでの大戦闘が描かれる予定だったとウワサされていますが・・・どうやら予算オーバー？？）
正に竜頭蛇尾もいい所の展開で、これまでにあったゾンビ映画の同類になってしまったクライマックスには正直がっかりでした。
もっとも、マーク・フォースター監督手に汗握るサスペンス演出は、冒頭から最後までテンションを緩めずに疲れる程ですし、ゾンビは、病原菌である細菌の行動原理に従う、と言うことで、あたかも集団がひとつの生命体のように振る舞うと言う見せ方はなかなか新しい。
特に、エルサレムの壁をあたかも粘菌のような動きを見せて這い上がり、壁からなだれ落ちると怒濤の勢いで通路を埋めていく“ソンビ洪水”は、この映画、最大の見所でしょう。
その後の飛行機内でのパンデミック発生、と言う絶体絶命のサスペンスも確かにすごい。
また、レイティングを考慮したのか、ゾンビ映画にありがちな残酷描写は抑えられ、出血され控えめ。
この種の描写が苦手な人でも大丈夫なのは・・・これは美点なのかどうなのか迷う所ではありますが、確かに特色と言えるでしょう。
正直な話、原作を活かしているとは思えない内容で、残念な仕上がりと言わざるを得ません。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
マーク・フォースター
■出演
ジェリー・レイン ・・・ ブラッド・ピット
（その他のキャスト）
ミレイユ・イーノス ダニエラ・ケルテス ジェイムズ・バッジ・デール ルディ・ボーケン マシュー・フォックス
ファナ・モコエナ デヴィッド・モース エリス・ガベル ピーター・カパルディ ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ
ルース・ネッガ モーリッツ・ブライブトロイ スターリング・ジェリンズ アビゲイル・ハーグローヴ
ファブリツィオ・ザカリー・グイド
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全人類に告ぐ、来たるＺデーに備えよ。
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