ローン・レンジャー
これは「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの立役者、ゴア・ヴァービンスキー監督とジョニー・デップらが仕掛ける西部劇アクション。
正義感溢れるものの、法の番人としての意識の強い堅物検事、ジョン・リードがテキサスにやって来た。
無法者の蔓延る西部で、法に基づく正義を広めようと意気込んでいた彼は、兄でテキサス・レンジャーのダニーと共に、無法者“ブッチ”キャベンディッシュを追跡する事になる。
だが、悪党一味の待ち伏せに遭い、ダニーはキャベンディッシュに殺され、ジョンも銃弾を受けて倒れてしまう。
それを見ていたインディアン・コマンチ族の悪霊ハンター・トントの怪しい術に救われたジョンは、マスクを被り、トントも追う強敵、キャベンディッシュを追跡するのだが・・・
ローン・レンジャーとは元々はラジオドラマで、その後、コミック化され、ＴＶドラマも３回製作された人気の物語。
西部劇の舞台に、アメリカ人の好むマスクのヒーローを持ち込んだ展開は大ウケし、愛馬・シルバーを走らせる時の「ハイヨー・シルバー！」の掛け声や、トントの「インディアン、うそつかない」の台詞は日本でも親しまれたものです。
（余談ですが、映画「紅の豚」にもカーチスが西部劇ヒーローを気取る場面で「ハイヨー・シルバー」の台詞があります）
そんな物語をアレンジしたこの映画、トントをジョニー・デップが演じる事で、大分、トントに比重を移した物語となってしまいました。
また、ジョニー・デップは、トントを自分色に改変。彼好みの白塗りの異相に、頭には鳥の羽に換え、カラスを１羽、丸ごと乗せると言う異様な姿（ちなみに、ジョニー・デップ自身のアイデアだそうです）での登場となりました。
冒頭の列車でのアクションから、目まぐるしい展開と、大規模な破壊を見せるのですが、それらは物語が進むにつれ更にパワーアップ。
クライマックスの列車のアクションは、並行して走る２編成の列車に併走する馬を交え、更に車両の切り離しや飛び移りを含め、多数のキャラクターが同時並行に突っ走る壮絶なもの。
余りの目まぐるしさにそれこそ目が回りそうですが、アクションゲームに慣れた最近の若い観客に訴求するには、このくらいのスピード感が必要なのかもしれません。
ただ、これまで成功例の少なかった海賊映画をヒットさせて来たゴア・ヴァービンスキー監督とジョニー・デップにしても、様式が固まり、偉大なヒット作も数多い西部劇で何処まで自由に出来るのか。
この映画でも、コマンチ族が騎兵隊に皆殺しにされる場面があり、明るく楽しい娯楽映画にするには重い内容を持つ西部劇を、同様に我が物に出来るのかはいささか疑問です。
（正直、荷が重いのではないか、と思う）
そして、この物語は、ローン・レンジャーが誕生するまでの物語。
白馬にシルバーと名付け、「ハイヨー・シルバー！」をやるのは、何とエピローグになってからですから・・・
（しかも、「二度とやるなよ」とトントに釘を刺されてしまいます）
物語としては、この後に幾つもエピソードがあるのですが、さすがに続編は難しいのではないでしょうか？
（２０１３年 ８月１０日 ＴＯＨＯシネマズ海老名にて）
（作品データ）
■監督
ゴア・ヴァービンスキー
■出演
トント ・・・ ジョニー・デップ
ジョン・リード／ローン・レンジャー ・・・ アーミー・ハマー
“ブッチ”キャベンディッシュ ・・・ トム・ウィルキンソン
（その他のキャスト）
ウィリアム・フィクナー ルース・ウィルソン ヘレナ・ボナム・カーター ジェイムズ・バッジ・デイル
ブライアント・プリンス バリー・ペッパー メイソン・クック
■コピー
世界を変えるのは、正義か? 復讐か?
■Ｌｉｎｋ
［戻る］