シャニダールの花
The flower of shanidar
これは、「五条霊戦記」や「生きてるものはいないのか」の石井岳龍（石井聰亙）監督が７年もの間、温め続けて来たもの。
女性の胸に咲く花を巡るＳＦサスペンスです。
若い女性の胸に寄生し、美しい花を咲かせる“シャニダールの花”・・・その花には画期的な新薬を生み出す成分が含まれるとされ、高額で取引されていた。
製薬会社のシャニダール研究所に勤務する植物学者の大瀧は、花の母体となった女性を保護し、花を満開にさせて採取する業務に就いていた。
そこへ新任の若いセラピスト、響子が配属される。ふたりはいつの間にか恋に落ちるが・・・そんな響子の胸にも“シャニダールの花”が芽を出して・・・
石井監督の持ち味と言えば、疾走感のあるアクションが売りだったように思うのですが、この映画は、花のむせかえるような官能性を映し出し、不安感を煽る音楽と、静謐な狂気によって彩られた会話を中心としたサスペンス。
花とは生殖器である、と言う事実から連想された“人間は逆さまになった花”と言う絵が、この映画のモチーフとなるでしょうか？
テーマとしては面白く、映画としてのビジュアルも秀逸。大瀧と響子を演じる、綾野剛と黒木華のふたりも、テンションを抑えた演技を見せて好印象ですし、所長役の古館寛治もいかがわしさ満点で文句なし。
しかし、映画としてはややバランスが悪い印象。
“シャニダールの花”とは何か――人類に破滅をもたらす悪魔か、あるいは心の隙間に咲く、ただの狂った花なのか――と言う問題を最後まではっきりさせず、物語も、大瀧と響子のメロドラマなのか、カタストロフの予兆を描くＳＦサスペンスなのか、どっちつかずの印象のまま終わってしまいました。
研究所の背後にあるはずの製薬会社、それから社会についてのリアリティのある描写にも欠けているのも問題で、全体的に観客を納得させる世界観に欠けているのも問題で・・・これならば２人のメロドラマに照準を絞った方が正解だったように思います。
（２０１３年 ７月２６日 横浜ブルク１３にて）
（作品データ）
■監督
石井岳龍
■出演
大瀧賢治 ・・・ 綾野剛
美月響子 ・・・ 黒木華
吉崎和彦 ・・・ 古舘寛治
（その他のキャスト）
刈谷友衣子 山下リオ 伊藤歩 志賀廣太郎
■コピー
君を守りたい。
■Ｌｉｎｋ
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