言の葉の庭
これは、新海誠の新作アニメ。
まるでジブリ映画のようだった前作「星を追うこども」にはがっかりしたファンも少なくなかったでしょうけれど、この映画は、新海誠らしさ溢れる映画になっていると思います。
靴職人になる事を夢見る高校生のタカオは、バイトをしつつ、ひとり靴作りに取り組んでいた。
そんなタカオにはひとつの習慣があった。
雨の降る日の午前、学校をサボり、公園の休憩所で靴のデザインを考えるのだ。
そんなある日、雨の公園で、タカオはユキノと言う年上の謎めいた女性に出会って・・・
この映画は、正に新海アニメの真骨頂。
持ち味と言える、透明感のある美しい光と影、写実的な美術世界の中に、アニメキャラを共存させるデジタル描写の巧みさに加え、この作品では、雨を見事なまでに美しく描いています。こんな美しい雨の描写、アニメでは記憶にないし、実写でもここまでのものは数少ないでしょう。
冒頭の、雨の公園の描写に唸らされ、終盤まで魅了されっぱなし。
そう、新海アニメに期待するのはこの描写。これが観たかったんです。
物語の方も情感たっぷり、モノローグを多用する演出手法もお得意のものでしたが・・・妙に生々しいユキノの背景ドラマと、そのユキノが歩き出すに至る経緯に、主人公の靴を繋げる辺りがいまひとつ収まりが悪かったのが残念。
また、ユキノの足を採寸する辺りは、もっと官能的に見せて欲しかった所です。
それでも最後、音楽が盛り上がる所で物語を一気に収斂させたのは、見事と言っていいでしょう。
出来得れば、靴作りと人生の再出発のドラマを、もう少し見せて欲しかったし、この美しい世界にもっと浸っていたかったのだけど・・・それはさすがに贅沢でしょうか。
PS
この映画と、併映の短編「だれかのまなざし」の２本に、久々に平野文が声の出演をしています。
往年のあの声は、魚河岸のおかみさん生活でなくしてしまったようだけど、艶っぽさを増した大人の女性の声になっていましたねぇ。
（２０１３年 ６月 １日 ＴＯＨＯシネマズららぽーと横浜にて）
（作品データ）
■監督
新海誠
■出演
タカオ（秋月孝男） ・・・ 入野自由
ユキノ（雪野百香里） ・・・ 花澤香奈
（その他のキャスト）
平野文 前田剛 井上優 潘めぐみ 小松未可子
■コピー
“愛（あい）”よりも昔、“孤悲（こい）”のものがたり。
■Ｌｉｎｋ
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