中学生円山
これは、宮藤官九郎、４年ぶり３本目の映画。
団地に住む妄想癖のある少年を主人公にした、ちょっと変わった青春映画（？）です。
酒も煙草もやらず、食後のフルーツだけが趣味の父、韓流ドラマにハマっている母、無神経な妹と共に、団地に暮らす中学生・円山克也。
妄想癖のある克也が夢中になっているのは、自分のペニスを自分でくわえる“自主フェラ”だった。
その為に、“自主トレ”として朝晩柔軟体操をし、中学でも柔軟が必須のレスリング部に入った。そんな克也に、ある異変が起きる。限界まで身体を曲げると、妄想の世界にトリップしてしまうようになったのだ。
そんなある日、上の階に、下井と言うシングルファザーが引っ越して来る。
生真面目だが働いている素振りもない下井に、克也は、最近、近所で発生した殺人事件を引き起こした殺し屋が彼なのではないか、と言う妄想を抱くようになって・・・
中学二年生と言う、大人でも子供でもない時代。それに性の目覚めも加わって、頭の中はよからぬ事で一杯、でも、それを実現出来ないもどかしさに、悶々とする毎日。何でも判ったような気になって、でも何も出来ない自分がもどかしい、そんな中学二年生の妄想を映像にしてしまったのがこの映画。
普通は、そんな日々を過ごした後に大人になっていく（なれない人間は、最近の言い方をすれば「中二病患者」だ）のですが・・・宮藤官九郎は、そんな恥ずかしい妄想の世界を、映画に昇華してしまいました。なるほど、これが奇才と言われる所以でしょうか。
ただ、世の中学生の多くが妄想をするにしても、これは、宮藤官九郎の妄想なのです。
ブッ飛んだその内容を、面白がって笑えるか、置いてきぼりを食って唖然とするかで、この映画への評価が決まるように思えます。
（ＮＨＫの「あまちゃん」を書いた人の映画だから、と、予備知識なしに来たような人はついて行けないでしょうね・・・）
主演の円山克也を演じた平岡拓真は、幾度もパンツを下ろす、と言う恥ずかしい設定の役を熱演。このがんばりは表彰ものでしょう。
でも、それ以上の存在感を見せていたのが下井役の草なぎ剛。
本人もノリノリで、クドカンの妄想世界を具現化して行った、と言う事ですが・・・そんな草なぎ剛に、夜の公園で服を脱いで踊っていた円山を咎めさせる（間接的に、ですが）役を割り振るとは、クドカンもなかなかキツい。
“自主フェラ”と言う脱力モノの目標、妄想をカタチにしたナンセンス・ギャク、これらをクドカンならではの絶妙のテンポで見せる展開は面白いのですが、さすがに長編映画をコレだけで押し切るのはちょっと厳しかったようで、この映画、終盤で、妄想が現実と交差して行く展開を見せます。
そして描かれるアクションとバイオレンス、そして、その過去にあった悲劇・・・クドカンならではのアクロバティックな展開ではありますが・・・下井の過去のエピソードが余りに重くて、この映画の内容にはそぐわず、どうにも違和感が拭い去れませんでした。
確かに面白い映画でしたが、そんなひっかかりもあってスッキリしなかったのは残念。
ただ、少年が妄想と現実に折り合いをつけ、大人になると言うのはこんなものなのかも知れませんが・・・
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
宮藤官九郎
■出演
円山拓真 ・・・ 平岡拓真
円山克之 ・・・ 仲村トオル
円山ミズキ ・・・ 坂井真紀
円山あかね ・・・ 鍋本凪々美
下井辰夫 ・・・ 草なぎ剛
（その他のキャスト）
刈谷友衣子 YOU 原史奈 家納ジュンコ 三宅弘城 皆川猿時 宍戸美和公 Ｒｉｏ
池田成志 少路勇介 遠藤賢司 ヤン・イクチュン 田口トモロヲ 岩松了 野波麻帆
桜木梨奈
■コピー
考えない大人になるくらいなら、死ぬまで中学生でいるべきだ。
■Ｌｉｎｋ
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