カルテット！
人生のオペラハウス
これは、ダスティ・ホフマンの初監督作品。
引退した音楽家たちの暮らす老人ホームを舞台とした映画です。
イギリスの田園地域にある音楽家の集う老人ホーム「ビーチャム・ハウス」。
そこに新たな住人として、ジーン・ホートンがやって来た。かつて世界中のファンを魅了した名歌姫だ。
彼女の出現に顔色を変えたのは、元テノール歌手で、ジーンの元夫でもあるレジー。
一方、ふたりの古くからの友人である、元バリトン歌手のウィルフと、元メゾソプラノ歌手のシシー・ロブソンは、ジーンとの再会に大喜びだ。
ホームでは運営資金を稼ぐコンサートの準備が進んでおり、プロデューサー役のシィドリックはジーン入居の話を聞くや、彼女とレジー、ウィルフ、シシーの４人で伝説のカルテット（四重唱）を再結成し、コンサートの目玉企画にしようとするのだが・・・
日本では、現役を退いて後、周囲の人間関係のギャップに苦しむ事が少なくないようです。
現役時代、どんなに高い地位を築いていても、老人になってしまえばみな同じ。現役当時、社長だったとしても、老人ホームではただの「おじいちゃん」になってしまい、周りが傅いたり、ちやほやしてくれる訳ではないからです。
ところが、この「ビーチャム・ハウス」では、現役当時の肩書きが物を言う世界とされています。
だからこそ、ジーンは新入居した途端から「新入り」ではなく、大物歌姫として，相応の敬意を払って貰えるし、認知症の進んでいるシシーだって、ホームの役職を任されています。
本当にこう言う世界があるのかは判りませんが、階級社会の風潮の残るイギリスならそんな部分もあるかも、と思わせます。
物語は、そんな老人ホームで繰り広げられるコンサートに向けての準備と、ささいな行き違いで別れてしまったジーンとレジーがよりを戻すのを重ねて描き、クライマックスがコンサートとなる展開。
予想外の部分もない、手堅い物語で、初監督のダスティ・ホフマンだけに無理はしていません。
しかし、ダスティ・ホフマン監督の苦労は相当なものだったろうと思います。
出演者は、ジーン役のマギー・スミスを始め、イギリスの名優がずらり。
そして、ホームの老人たちは、いずれもイギリスのかつての名音楽家（さまざまなオーケストラの首席演奏家クラス）たちなのです。
彼らをまとめ上げただけでも大変なことだったろうと思います。
そんな彼らが音楽を競うようなコンサートの場面も、この映画の見所でしょう。
また、ジーンらのカルテットの始まる場面で、すっとカメラを引く辺りも潔い。
名優たちに口パクなどはさせられない。名優は演技で、音楽家は歌と演奏で、そして、自分は監督に徹してまとめ上げる。
そんなダスティ・ホフマン監督の初監督らしからぬまとめ方もお見事、でした。
（２０１３年 ４月２６日 ＴＯＨＯシネマズららぽーと横浜にて）
（作品データ）
■監督
ダスティン・ホフマン
■出演
ジーン・ホートン ・・・ マギー・スミス
レジー・パジェット ・・・ トム・コートネイ
ウィルフ・ボンド ・・・ ビリー・コノリー
シシー・ロブソン ・・・ ポーリーン・コリンズ
シィドリック・リビングストン ・・・ マイケル・ガンボン
（その他のキャスト）
シェリダン・スミス アンドリュー・サックス ギネス・ジョーンズ トレヴァー・ピーコック デヴィッド・リアル
マイケル・バーン パトリシア・ハーレイ ジョン・ベレー イタ・ハーバート グレイム・スコット
ヌアラ・ウィリス メロディ・ワディンガム ロニー・ヒューズ サラ・クローデン ジョン・ローンズリー
ジョン・ジョージアディス シンシア・モーリー ジャック・ハニーボーン パトリシア・ラヴランド コリン・ブラッドベリー
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さぁ、クライマックスはこれから──
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