ハッシュパピー
バスタブ島の少女

　これは、ルーシー・アリバーの舞台「ジュシー＆デリシャス」を元に、本作が初の長編映画となるベン・ザイトリン監督が映画化したもの。

　大河の河口に浮かぶバスタブ島で、６歳の少女、ハッシュパピーは、父・ウィンクと動物たちと共に暮らしていた。
　巨大堤防によって、近代文明と切り離され、自給自足の気ままな毎日を送っていたバスタブ島にも、世界のきしみが降り掛かる。
　地球温暖化によって極地の氷が溶けて海面が上昇、大嵐と共にバスタブ島を襲い、島の大半を水没させてしまったのだ。
　更に、極地の氷によって封じ込められていた巨獣が甦り、行く先にあるものを食い尽くしながら、バスタブ島に向かっていた・・・

　この映画、純真な少女を主人公に、自然と文明のあり方を問いかけるもの。
　そのテーマ、そして、その描き出す世界は、まるで宮崎アニメの世界です。
　天真爛漫な少女がいて、素朴で陽気な父がいて、女たちは逞しく、自然の中で動物たちとも仲良く、調和をとって暮らしている、と言う冒頭のシーンは正にそのままですし、豪快な食事シーンもまたそれらしい。
　水没した村の様子も、「パンダコパンダ」か「崖の上のポニョ」を連想させますし、全てを食い尽くしながら暴走する巨獣前に立つハッシュパピーの姿は、まるでナウシカです。　

　ハッシュパピーを演じたクヮヴェンジェネ・ウォレスは素晴らしい存在感を見せ、それまで演技経験０にも関わらず、本作でアカデミー賞の主演女優賞にノミネートされました――さすがにこれまでの最少年齢を大幅に引き下げる､受賞には至りませんでしたが……

　自然の中で逞しく生きるハッシュパピーの暮らしは、“文明”によって、この地球で「生きる」と言う実感から距離を置いている私たちには、ファンタジーに思えるかも知れません。
　しかし、実写化によって生々しさを増したそれは、あたかもこの地球で生きて行くと言う事を見せつけているようです。例え、それが堤防の向こう側だったとしても・・・

　（年　月日　にて）

（作品データ）

　■監督

ベン・ザイトリン　

　■出演

　ハッシュパピー　・・・　クヮヴェンジャネ・ウォレス

　ウィンク　・・・　ドワイト・ヘンリー

（その他のキャスト）
　リービ・イースタリー　　ローウェル・ランデス　　パメラ・ハーパー　　ジーナ・モンタナ　　アンバー・ヘンリー
　ジョンシェル・アレキサンダー　　ニコラス・クラーク　　ヘンリー・D・コールマン　　カリアナ・ブラウワー
　フィリップ・ローレンス　　ハナ・ホルビー　　ジミー・リー・ムーア　　マリリン・バーバリン
　ビッグ・シェフ・アルフレッド・ドーセット　　ジョーヴァン・ハサウェイ　　ケンドラ・ハリス

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あたしは強くなる　

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