桜、ふたたびの加奈子
これは、新津きよみの小説「ふたたびの加奈子」を広末涼子と稲垣吾郎共演で映画化したもの。
信樹と容子の夫婦が愛娘の加奈子を失ったのは、小学校入学式の朝の事だった。
思い詰めた妻の容子は、娘の後を追うように自殺を図るが、なんとか一命を取り留める。
それからの容子は奇妙な振る舞いを見せ始める。
加奈子のために食事を用意し、話しかけ、手を引いて共に遊びに出掛ける・・・そんな容子の振るまいに信樹は苛立ちを募らせていく。
そんなある日、加奈子の気配が消え、その後を追うように走り出した愛犬のジローを追っていた加奈子は、臨月のお腹を抱えた少女・正美と出会って・・・
この映画、子供を亡くした母親の再生の物語だと思っていると裏切られるでしょう。
これは、流れゆく時の中、ふたたび巡り会う命を描いたファンタジーなのです。
そのテーマを暗示するために、映画の中で執拗に繰り返される円環、それに流れゆく水の描写・・・と言う手法はアーティスティックなものであり、単なる感動を売りにする一般娯楽作とは異なるものです。
こうした試みは興味深く観られました。
容子を演じた広末涼子ですが、相変わらずの年齢不詳っぷり。場面によっては映画デビュー時と大差ない、初々しい少女にも見えますし、年齢相応の女の顔を見せる時もあります。また、その演技は素晴らしく、抑え気味の演技ながら、その心理を繊細に見せていく辺りは見物です。
信樹役には、最近、エキセントリックな役柄での活躍が目立つ稲垣吾郎が、“普通の人”を演じて、物語を現実に着地させています。
なかなか見応えのある映画ですが、“生まれ変わり”に“前世の記憶を持つ子供”、そして幽霊と、オカルティックな題材を盛り込んだ上に、不安と緊張を煽る演出がいささかホラーチックなのが気になる所。
中盤の展開など、「狂った母親が他人の子供を奪う」と言う、サイコ・ホラーとなるのではないか、と危惧しましたし、ラストカットの言葉が物語と繋がった時には背筋が寒くなりました。
（２０１３年 ４月１２日 ＴＯＨＯシネマズ上大岡にて）
（作品データ）
■監督
栗村実
■出演
桐原容子 ・・・ 広末涼子
桐原信樹 ・・・ 稲垣吾郎
野口正美 ・・・ 福田麻由子
（その他のキャスト）
高田翔 吉岡麻由子 田中里衣 永井秀樹 岸建太朗 戸田みのり
横溝菜帆 吉満蒼 安藤聖 山城秀之 富永凌平 増本庄一郎
岡野謙三 米谷澪 西岡航 太田しずく 江波杏子
■コピー
あの子はきっと生まれ変わって帰ってくる――
■Ｌｉｎｋ
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