| ジャンゴ 繋がれざる者 |
これは、クエンティン・タランティーノの３年ぶりの新作。
物語の舞台は、１８５８年、奴隷制のある時代のアメリカ。
賞金首・ブリトル三兄弟を追うドイツ人賞金稼ぎのＤｒ．キング・シュルツは、三兄弟の顔を知る黒人奴隷・ジャンゴを買い、自由と引き替えに自分の仕事を手伝わないか、と持ちかける。
賞金稼ぎとしてジャンゴは意外な才能を発揮し、シュルツの相棒として働き始める。
やがて、ジャンゴは、奪われた妻を探している事を告白、シュルツの協力もあって、妻・ブルームヒルダが南部の大農場主カルビン・キャンディの元にいる事を知るのだが・・・
これは、マカロニ・ウェスタン（これは淀川長治が作った和製英語で、アメリカでは“スパゲティ・ウェスタン”と言う）の様式で作られた映画です。
マカロニ・ウェスタンとは、１９６０〜１９７０年代にイタリアで作られた西部劇で、アメリカで作られた西部劇がドラマ性を持っていたのに対し、派手なガンファイトや、過剰な残酷描写などを特色としていました。
ジャンルとしてはＢ級娯楽作品で、アメリカ本国よりも諸外国の方で広く受け入れられ、日本でも「用心棒」シリーズや「ガンマン」シリーズなど、西部劇と言えば、これらをイメージする人も少なくないでしょう。
タランティーノが「イングロリアス・バスターズ」のプロモーションで来日した際に、これらマカロニ・ウェスタンのＤＶＤを大量購入したのが映画製作のきっかけだったとか。
まぁ、Ｂ級アクション映画の好きなタランティーノだけに、これに刺激された、と言うのはよく判る話ですが、それを映画にするまでには一ひねりも二ひねりも加えています。
映画の舞台は、アメリカ南部に移し（だから、“西部劇”ではない）、しかも、物語のモチーフになっているのはゲルマン神話、そして、黒人を主人公にしよう、と言うのですから・・・
出来上がった映画は、２時間４５分と大長編になりましたが、意外にも長さを感じさせず、テンポよく見せるので全くダレる事がありません。
タランティーノお得意の会話を重ねながら緊張感を高め、アクションに突入する展開は勿論あるし、その後のアクションは、激しい銃撃、飛び散る血潮の過激描写。
ジャンゴを演じるジェイミー・フォックスは出色の演技を見せていますし、脇を固める俳優陣も素晴らしい。敵役となるサミュエル・Ｌ・ジャクソンは厭らしさ全開の怪演、相棒・シュルツを演じた、クリストフ・ヴァルツのドイツ訛りの嫌みったらしい台詞回しも最高。レオナルド・ディカプリオも撮影中の怪我をも気にしない熱演を見せているのですが・・・演技巧者２人に挟まれては立場がないのがお気の毒でした。
また、タランティーノの映画と言えば、女性陣の活躍も見所なのですが、この映画のヒロイン、ブルームヒルダは、ヒーローに助けられるお姫様演技だったのがちょっと物足りなかったかなぁ。ラストシーンの快活な笑顔をもっと見たかったのですが。
映画オタクのタランティーノらしく、主題歌を始め、過去からの引用も多く、元ネタを知っていればより楽しく、知らずに観てもこれはこれで面白い。
奴隷解放以前のアメリカの暗部を描き、歴史あるウェスタンを引用し、更に、人を喰った、一ひねりでは済まない設定を加えながら、語り口はあくまで軽い。
これをさらりを描いて見せる事の凄さは、さすがはタランティーノ、と言う所でしょうか。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
クエンティン・タランティーノ
■出演
ジャンゴ ・・・ ジェイミー・フォックス
ブルームヒルダ ・・・ ケリー・ワシントン
Ｄｒ．キング・シュルツ ・・・ クリストフ・ヴァルツ
カルビン・キャンディ ・・・ レオナルド・ディカプリオ
スティーブン執事 ・・・ サミュエル・L・ジャクソン
（その他のキャスト）
ドン・ジョンソン フランコ・ネロ ジェイムズ・ルッソ アンバー・タンブリン ブルース・ダーン
ジョナ・ヒル クエンティン・タランティーノ
■コピー
これがワイルドだ。
■Ｌｉｎｋ
［戻る］