これは、韓国の国際スター、イ・ビョンホン、初の本格時代劇。韓国のアカデミー賞に相当する大鐘賞で１５部門受賞と言う歴史ドラマです。
　映画の中、イ・ビョンホンは朝鮮王と影武者となる道化の二役を演じ、主演男優賞を取っています。

　１６１６年、朝鮮。
　暗殺の危機に怯える朝鮮王朝１５代目の王、光海君は、影武者となる男を探した。選ばれたのは妓生宿で道化をしていたハソン。
　だが影武者を宮中に入れる前に、光海君は突如倒れて意識不明となり、承政院長官、都承旨は急遽ハソンを呼び出して王の代役に据えた。
　宮廷は隙あらば光海君より権力を奪おうとする勢力が多数派となっており、王が倒れたとなれば、彼らが実権を握る事が明白だったからだ。
　当初は、戸惑いを見せていたハソンだが、さすがは道化だけに王のように振る舞う芝居も板につき、自然な振る舞いを見せるようになる。それだけでなく、世話役の宦官、チョ内官に助けられ、自力で政治を勉強して、王としてこの国をよくしよう、と思うようになる。
　そんなハソンの姿勢や人柄に、周囲の人たちも信頼を寄せていくが・・・

　宮廷内の陰謀渦巻く権力闘争、と言うのもよくある話ですし、立場の違うふたりが入れ替わって、と言う物語も数多くあり、そのスタイルを踏襲するこの映画も物語に新味はあまりありません。
　しかし、この映画、大スターで、かつ、演技の幅の広いイ・ビョンホンを起用。更に、客を寄せるネームバリューに、笑いを呼ぶコミカルなシーン、スリリングな駆け引きに、涙を誘う人情劇と、韓国映画ならでは盛り沢山の内容で、エンターテイメントに仕立てています。
　ただ、主人公の動機付けにする為とは言え、十五の少女を酷い目に遭わせると言うのは・・・まぁ、これも女子供に容赦ない，韓国映画らしい部分ではあるのですが。
　
　惜しいのは、導入部を少し急ぎ過ぎた感があり、光海君の暴君ぶりや、そうなるように追い詰めた宮廷内の陰謀が描かれていなかったこと。
　２時間を超える映画なので、その辺、端折ったのでしょうが・・・こうした描写があると、光海君側に感情移入が出来、思い入れを持って見る事が出来ると思うのですが。

　ただ、道化から王まで、持ち前の演技力で演じ切ったイ・ビョンホンの存在、しっかり再現された当時の宮廷や、そこで行われる王の政務の様子なども興味深い。
　終盤には、さすがにコミカルな描写は抑えられますが、しっかり盛り上げた上で、涙も誘い、希望を感じさせるラストで締めた見事な出来映えで、見応え十分。
　劇場は、イ・ビョンホンのファンと思しき中年女性が目立ちましたが、これは広く楽しめる娯楽作だと思います。
　

　（２０１３年　３月　３日　ＴＯＨＯシネマズ川崎にて）

（作品データ）

　■監督

チュ・チャンミン　

　■出演

　光海君／ハソン　・・・　イ・ビョンホン（二役）

（その他のキャスト）
　リュ・スンリョン　　ハン・ヒョジュ　　キム・イングォン　　チャン・グァン　　シム・ウンギョン　　キム・ミョンゴン

　■コピー

王になりたい。操り人形でない、本当の王に。　

　■Ｌｉｎｋ

http://becameking.jp/　

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