きいろいゾウ
これは、西加奈子の同題小説を、宮﨑あおいと向井理主演で映画化した若い夫婦の物語。
ムコこと武辜歩と、ツマ、妻利愛子は、伊勢にあるムコの田舎の旧家で結婚生活をしている。
ツマは、草木や動物の声を聴くことが出来、小説家のムコは、老人ホームで介護のバイトをしながら、帰宅後に執筆し、日記を書いてから眠る。平穏そのものに見えたふたりの暮らしだが、ある日、ムコ宛てに差出人のない１通の手紙が届いたことから、ふたりの間には穏やかではない空気が流れるようになって行く・・・
子供向け絵本のようなタイトルだし、映画内にもきいろいゾウと少女のエピソードがアニメで挿入されるなど、一見、ファンタジックな色合いを持つ映画ですが、その裏にある映画のテーマは、「夫婦関係」と言う、大人の世界。
一見、ままごとのような無邪気な夫婦生活をしているかのように見えたふたりだけど、出会って即、駆け落ち同然に結婚したふたりにはお互いに知らない事、言ってない事が沢山あります。
それが原因となって、お互いを傷つける事にもなるのです。
愛しているからこそ言えない、知りたいけど踏み込めない、単純だけれど深い、「夫婦」と言う人間関係を、あくまでリアルに描いて行きます。
そんな映画で抜群の存在感を見せるのはやはり宮崎あおい。
今回は、ほぼすっぴん、眉すら描かずに、飾り気のない、少女がそのまま時間を経たようなツマを力演。
珍しくベッドシーンまでありますし、台詞なしの表情だけでその感情を表す辺りはさすが。しかし、中盤に見せる鬼気迫るような険しい表情はトラウマものですが・・・
この映画、最近の映画としては珍しく、観客に懇切丁寧な説明をしません。
何故、ツマは動植物の言葉を交わせるのか、きいろいゾウの意味する所は、そして、ムコと夏目緑と言う女性との間に何があったのか・・・この辺りをどうにも受け取れるようにしてあるので、観た人は自分の中で受け止め、答えを出さないといけない。
その点では、この映画、現代の映画としては、ややハードルが高いかもしれません。
（２０１３年 ２月１０日 ＴＯＨＯシネマズ川崎にて）
（作品データ）
■監督
廣木隆一
■出演
ツマ（妻利愛子） ・・・ 宮崎あおい
ムコ（武辜歩） ・・・ 向井理
（その他のキャスト）
濱田龍臣 浅見姫香 本田望結 大杉漣 柄本佑
安藤サクラ 高良健吾 緒川たまき リリー・フランキー
松原智恵子 柄本明
■コピー
痛みを知る、すべての人へおくる感動のラブストーリー
■Ｌｉｎｋ
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