アウトロー
ＪＡＣＫ ＲＥＡＣＨＥＲ
これは、イギリスの作家リー・チャイルドの人気シリーズを、トム・クルーズ主演で映画化したもの。
ジャック・リーチャーシリーズは、これまで１７作が刊行されているのだけど、この映画は、９作目に当たる「Ｏｎｅ Ｓｈｏｔ」の映画化だと言うことです。
ピッツバーグ近郊で、狙撃銃による無差別殺人事件が発生、５人の男女が犠牲となった。現場に残された遺留品から警察は、元陸軍兵士ジェイムズ・バーを容疑者として逮捕。
だが、彼は「ジャック・リーチャーを呼べ」とメモに残した後、護送中に他の囚人たちから暴行を受けて意識不明の状態になってしまう。
ジャック・リーチャーとは？警察と検察がその行方を探そうとしているうちに、本人がふらりと警察にやってくる。
そして、彼はジェイムズ・バーの弁護を担当するヘレンに請われ、事件の調査を行うのだが・・・
原作のジャック・リーチャーは身長１９５cm以上ある、まるでフランケンシュタインの怪物のような大男で、己の信じる真実の為には躊躇わずに人を殺す、不気味とも言える危険な雰囲気と、孤独を併せ持つ、とされていますが、この役をトム・クルーズが演ることで、映画タイトルにもなっている“アウトロー（無法者）”と言う色合いは薄まり、ジャック・リーチャーの「歴代の軍人一家に生まれた軍のエリート」と言う華やかな経歴が表に出てしまっているように感じました。
まぁ、確かに、それが“役を己に引き寄せてしまう”スターの宿命と言うもの。
スター俳優ともなれば、観客はスターそのものを観に来る訳で、観客が期待するスター像から、そうそう離れる訳にはいかないのです。
この映画のトム・クルーズは、確かに、得意の爽やかな笑顔こそ封印していますが、いつもの「強く、格好よく、女にモテる」、トム・クルーズ得意のヒーローになっています。
あと、ジャック・リーチャーの「何も持たない」と言うキャラクターは確かに面白い。
身元を特定されるから、携帯電話もクレジットカードも持っていない。免許証もないから、クルマも持っていない（だから、バスに乗ってやってくる）。固有の武器も持たないし、抜群の記憶力で全て覚えてしまうのでメモもとらない。持ち歩くのは僅かの現金だけ。着替えも持ってないので、洗濯中は裸でいるしかない。
まぁ、ここまでしないと、現在では所在不明の流れ者と言うのは成立しないのか、と言う部分を考えさせられる、なかなか面白い設定と思いました。
気になったのは、途中、調査のために絡んで来たチンピラ宅に侵入した際の描写で、どう見ても素人に殴られるまで接近に気づかなかったボンクラぶり。
これで危険な調査など出来るのだろうか？と思わせてしまう描写で、何とも腑に落ちないものでした。
映画として観ると、途中の派手なカーチェイスを除けば、大仕掛けや大規模な破壊シーンもなく、意外なほどこぢんまりとした映画で、トム・クルーズが主演しているのが不釣り合いに思えるほど。
こうした映画にも出るんだ、と言う新たな取り組みにも思えますが、原作同様、映画をシリーズ化出来るかどうかは微妙な感じがします。
（２０１３年 ２月８日 ＴＯＨＯシネマズ海老名にて）
（作品データ）
■監督
クリストファー・マックァリー
■出演
ジャック・リーチャー ・・・ トム・クルーズ
ヘレン・ロディン ・・・ ロザムンド・パイク
ジェームズ・バー ・・・ ジョセフ・シコラ
（その他のキャスト）
リチャード・ジェンキンス デヴィッド・オイェロウォ ヴェルナー・ヘルツォーク ジェイ・コートニー ロバート・デュヴァル
アレクシア・ファスト
■コピー
その男、行きつく先に事件あり。その名は、ジャック・リーチャー
■Ｌｉｎｋ
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