これは、ちょっとファンタジックな異色のラブロマンス。
　本作主演の他に脚本も執筆したゾーイ・カザンが、あのエリア・カザンの孫娘である、と言うことでも注目をされた映画です。
　しかも、ゾーイ・カザン、主演のポール・ダノと、私生活でも恋人関係にあり、撮影中も映画の中と変わらず熱々ぶりを見せつけていたとか・・・
　（しかし、いくら物語上のこととは言え、彼氏を「天才」と誉め上げ、その彼氏には自分のことを「理想の女性」と言わせる、赤面ものの脚本を堂々と書く辺り、本気で熱くなっているようです）

　天才小説家として１９歳で華々しくデビューした、カルヴィンだが、その後、１０年間、ヒット作を出せずに重度のスランプに落ち込んでいた。
　カウンセラーから、好きな人のことをレポートするように、と宿題を出されたカルヴィンは、夢で見た素敵な女の子のことを書き始め、次第に勢いがついて、それを恋愛小説として書き始める。
　その女の子はルビー・スパークス。
　かつてのように執筆意欲を取り戻したカルヴィンだが、ある朝、目が覚めると、そのルビーがキッチンに立っていた・・・！

　これは、内気で人付き合いの悪い青年が“理想の恋人”を作り出してしまう、と言う話で、元のアイデアはギリシア神話のピュグマリオンと言うことですが・・・こう言う話、日本ではマンガ・アニメに数多くあり、あまり目新しいものではありません。
　欲望を満たす手段が与えられ、そのうち、自己中心的な欲望が暴走してしっぺ返しを食らう、と言う教訓劇のスタイルもよくあるもの。
　（それ故、この物語に「ドラえもん」を連想した人も少なくないようで・・・）
　ただ、この物語を作ったゾーイ・カザンが女性であるだけに、男性目線で作られた数多の作品に比較し、男性に対してかなり厳しい指摘が込められています。
　それは、主人公のカルヴィンのような、知性は高いのだけれどコミュニケーション不全により内にこもりがちな最近の男性に対する、いささか直接的な説教。
　妄想の女性を追うのではなく、表に出て、現実の出会いを見つけろ、と。
　こうした物語、日本では珍しくはありません。
　（あの「新世紀エヴァンゲリオン」も全てを受け入れ一体になる母の愛を拒否し、他者と出会う事を選択する物語でした）
　しかし、そんな話がアメリカでも、しかも、こうしてはっきりと諭す形でのメッセ−ジとして語られるとは・・・日本で起きていることはアメリカでも起きているんだなぁ、と納得しました。

　（２０１３年　１月　５日　シネクイントにて）

（作品データ）

　■監督

ジョナサン・デイトン／ヴァレリー・ファリス　

　■出演

　カルヴィン・ウィアフィールズ　・・・　ポール・ダノ
　ルビー・スパークス　　　　　 　 ・・・　ゾーイ・カザン

（その他のキャスト）
　アントニオ・バンデラス　　アネット・ベニング　　スティーブ・クーガン　　エリオット・グールド　　クリス・メッシーナ
　アリア・ショウカット　　アシフ・マンドゥヴィ　　トニ・トラックス　　デボラ・アン・ウォール

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