おだやかな日常
これは、東日本震災後の東京近郊を舞台に、原発の放射能汚染の不安にさらされる女性たちの姿を描いたヒューマンドラマ。
２０１１年３月１１日の東日本震災からドラマは始まります。
東京近郊のマンションに暮らす主婦で、グルメレポーターのユカコ。
震災後、仕事柄、考えざるを得なくなった「食の安全」を調べるうち、深い不安に苛まれるようになる。
その隣室に住むサエコは、震災をきっかけに夫が出て行ってしまい、母子ふたりの生活が始まる・・・
震災と原発事故に関して、映画がこれを受け止め、どのように表現して行くか、既に様々な取り組みがされていますが、これはその中でも異色。強いて言えば「希望の国」が近いのですが、本作は、舞台を「被災地」にしていないのが最大の特徴。
そもそも、問題があるのかないのか判らない状態で、放射能に怯える女性たちを描いています。
彼女たちが守ろうとしているのは、平和で、安心出来る未来と、子供たち。
でも、その声は形だけの“おだやかな日常”を望む声で押しつぶされそうになってしまいます。
正直な感想としては、この辺りの描写、怯えるふたりの孤立を極端に描き過ぎているように思えてなりませんでした。
（実際、震災直後は、どちらかと言うと放射能を警戒する方が普通だったと思う）
ただ、映画の伝えたい所はよく判ります。
震災から２年が過ぎようとし、多くの人々が震災の被害を忘れ、残るは「被災地」の復興だけだ、と思っています。
でも、チェルノブイリ原発事故に匹敵するレベル７の放射線災害を引き起こしたその影響がどれほどあるのか、それはまだ判らないのです。
この映画、製作に当たっては、日本ではスポンサーが得られず、海外に出資を求めて製作にこぎ着けました。
（その為、海外公開前提なので英文字幕入りです）
日本国内での無関心、既に事故は収斂したかのような対応・・・そうした現在の日本に向けてこそ、この映画が送るメッセージが必要なのかもしれません。
（２０１３年 １月 ５日 渋谷・ユーロスペースにて）
（作品データ）
■監督
内田伸輝
■出演
サエコ ・・・ 杉野希妃
ユカコ ・・・ 篠原友希子
タツヤ ・・・ 山本剛史
キヨミ ・・・ 渡辺杏実
（その他のキャスト）
小柳友 渡辺真起子 山田真歩 西山真来 志賀廣太郎
寺島進 古舘寛治 木引優子 松浦祐也 高嶋寛
■コピー
コーヒー淹れる、仕事する。放射線量を計る。
これが私たちの毎日。
■Ｌｉｎｋ
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