| 恋のロンドン狂騒曲 |
これは、ウディ・アレン監督による、いささか辛辣なラブコメディ。
物語の中で、恋は常に美化され、誰もが、スクリーンに描かれる素敵な恋に憧れを抱くもの。
でも、この映画は、恋のもうひとつの側面である、恐ろしさを描きます。
「恋は盲目」、周りが見えなくなるからこそ、道を誤り、人生を棒に振る事もあるのです。
結婚４０年目にして、若返りに取り憑かれた資産家のアルフィ。彼は、妻を捨てて新生活を始め、やがて女優崩れのコールガールに入れ上げて再婚を決意。一方、妻のヘレナは、人生に失望した挙げ句、怪しげな占い師のもとに通い始める。
ヘレナの娘サリーは、作家デビュー以来長いスランプが続く夫ロイとの生活を支えるため、美術の知識を活かし画廊で働き始めるが、ハンサムでリッチなオーナーに恋してしまう。一方、ロイはロイで、窓から姿を見かけた若い女性、ディアを口説くことで、仕事が上手く行かない現実から逃避して・・・
毎年ほぼ１本のペースで新作をリリースするウディ・アレンですが、今年は２本目。実は、この映画、「ミッドナイト・イン・パリ」の前、２０１０年に製作された映画です。
俳優陣も豪華だし、何でこの映画の公開が見送られて来たのかは判りませんが・・・この映画、ウディ・アレンらしい皮肉とユーモアがいささかキツく、辛口になっている辺りが理由かも知れません。
この映画で描かれるのは、美しい恋愛劇ではなく、エゴに見栄に現実逃避と、いささか「みっともない」恋愛の姿。
良識的に見れば眉を顰めざるを得ないようなものばかりではありますが、まぁ、恋なんて、当事者はともかく、周りから見れば滑稽で格好悪いことが多く、この映画が描くような「みっともない」真似は、多くの人が身に覚えがあるのではないでしょうか？
ただ、そんな部分に共感し、登場人物に感情移入してしまうと、当人にとっては深刻で時に悲劇であったりする事を、喜劇として観る事が出来なくなってしまいます。
だから、映画は、登場人物を、「裕福な知識人」としました。
それによって、恋する事で、人生の袋小路に落ち込み、どんどん不幸になって行く人物を、観客は胸痛めずに観る事が出来ますが・・・深読みすれば、資産やインテリジェンスも、恋の前には意味を持たず、誰も皆同じ、と観れますし、更に、金に困らないから恋などにうつつを抜かせるのだ、とも観られます。
そんな“毒”を秘めながら、映画は明るくコミカルで、お洒落でスマート。
ちょっと気取りすぎの感もあるけれど、そんな部分も含め、ウディ・アレンの持ち味でしょうか。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
ウディ・アレン
■出演
アルフィ ・・・ アンソニー・ホプキンス
ヘレナ ・・・ ジェマ・ジョーンズ
ロイ ・・・ ジョシュ・ブローリン
サリー ・・・ ナオミ・ワッツ
ディア ・・・ フリーダ・ピント
（その他のキャスト）
アントニオ・バンデラス ポーリーン・コリンズ ロジャー・アシュトン=グリフィス ルーシー・パンチ
アンナ・フリエル ユエン・ブレムナー
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