任侠ヘルパー

　これは、ＳＭＡＰの草なぎ剛がヤクザの老人介護ヘルパーを演じる、と言う人気ＴＶドラマの映画版。
　“いい人”・草なぎ剛に極道者を演じさせるのも異色なら、堺正章にヤクザの大親分、清純派の夏帆に茶髪のヤンキー娘を演じさせるなど、キャスティングはなかなか挑戦的です。
　（もっとも、草なぎ剛は目つき鋭く、なかなか極道者もハマっています）

　堅気となった元・極道の翼彦一。
　だが、バイト先のコンビニで強盗犯を見逃した事で刑務所送りとなってしまった。
　出所後、ツテを頼って再び裏稼業に手を染める事になった彦一のシノギは、不法に老人介護施設をデッチ上げ、収容された痴呆症の老人たちから生活保護や年金をせしめる、と言うものだった。
　ろくな設備もなく、介護もいい加減な悪臭漂う施設で、人間扱いされていない老人たちを食い物にする事に彦一は苛立ちを募らせて・・・

　この映画、主人公が暴力団員と言うやっかいな設定で、曲芸のような業で主人公を見事にヒーローにしています。
　まぁ、草なぎ剛と言う“いい人”のイメージの強い俳優の力を借りての事ではありますが・・・
　また、老人介護問題について、
　「こんなオレらを頼るしかねぇ連中がいんだよ！」
　と、ヤクザも行政も同列の役立たずだ、とした点は、むしろ見事とも言える描写でしょう。

　印象に残る場面は、痴呆の進んだ老女たちに、若い女性ヘルパーの茜が箒と塵取りを渡し、子供に教えるように掃除を教えようとするシーン。
　ところが、老女たちは教えるまでもなく辺りを掃き清め始め、呆気にとられる茜に、ベテランヘルパーが、
　「こいつらが何年主婦をやって来たと思っているんだ？頭は呆けちまっても、身体が覚えているんだよ」
　と言う。やがて、そんな老女たちも、誰かの役に立っている、と言う事に喜びを覚え、活き活きし始める――人は、人の間で、誰かに必要とされる事が大事なんだと言う事を無言のうちに訴える、意外な社会性には感銘を受けました。

　クライマックスは「耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び」、それでも死地に赴く男の心意気。
　その後ろ姿には、久々に「ヤクザ映画」の美学を見た思いがしました。
　（ただし、これは東宝映画。「ヤクザ映画」なら東映の十八番の筈なのですが・・・）
　

　（２０１２年　１１月２３日　ＴＯＨＯシネマズららぽーと横浜にて）

（作品データ）

　■監督

西谷弘　

　■出演

　翼彦一　・・・　草なぎ剛

　仙道茜　・・・　夏帆

（その他のキャスト）
　安田成美　　風間俊介　　香川照之　　杉本哲太　　宇崎竜童
　堺正章　　黒木メイサ

　■コピー

お前ら見捨てるほど落ちちゃいねぇよ　

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