００９
ＲＥ：ＣＹＢＯＲＧ
「サイボーグ００９」と言えば、「仮面ライダー」に並ぶ石ノ森章太郎の代表作。
１９６４年に始まり、掲載誌を転々と変えながら、石ノ森章太郎のライフワークとなって遂に完結することなく終わった作品です。
これは、過去に３シリーズのアニメと映画化もされていますが、今回、全くの新作として３Ｄアニメ映画化されたのがこの映画です。
２０１３年。世界各国で、高層ビルをターゲットとする爆破テロが連続して発生。テロ実行犯は「“彼の声”に従った」と声明を残していた。
この連続テロ事件に、ギルモア博士は、今はそれぞれの故国で活動するサイボーグ戦士たちに集結を呼びかける。
サイボーグ戦士のリーダーだった００９こと島村ジョーは、博士によって記憶を消され、高校生として東京で暮らしていたが、ジョーの元にも“彼の声”が届いていた・・・
プロダクションＩ．Ｇ．によるこの「００９ ＲＥ：ＣＹＢＯＲＧ」は、２０１０年の「ＣＥＡＴＥＣ ＪＡＰＡＮ」で発表された押井守監督による短編映画「００９ ＲＥ：ＯＰＥＮＩＮＧ」を長編化したもののようです。
監督は押井守から神山健治に交代していますが、描かれる世界は押井ワールドそのもの。
犬こそ出て来ませんが、鳥に、異世界への案内人である“白い服の少女”、そして、天使の化石と、押井作品お馴染みのモチーフが頻繁に登場します。
確かに、オリジナルの「００９」でも、神と人間の関係性を問うエピソードはありましたので、“神”とは何か？と言う難題をテーマに掲げたのは理解出来るにしても、この世界観は、余りにオリジナルからかけ離れたもの。また、この物語を、今、「００９」で描く事に疑問を感じずにはいられません。
恐らく、「００９」ファンからは、相当の非難を浴びるのではないでしょうか？
セル画のタッチとＣＧを融合させた映像、様々に趣向を凝らしたアクションなど、アニメとしての映像クオリティは文句なしに高く、現代風にアップデートされたサイボーグ戦士キャラクターも、あまり違和感を感じさせず、絶妙のアレンジと言えるでしょう。
００２がＮＳＡ、００７がＳＩＳのエージェントになっているとか、００４がＧＳＧで“骨董品”扱いされているとか、００６が自分が経営する中華料理チェーン店に自分のコードネームを使ってギルモア博士と訴訟沙汰になっているとか、時間の経緯を感じさせると共に現実世界との接点を描く工夫にはニヤリとさせられましたが、サイボーグ戦士の名前を見れば判るように、これ、元々「少年マンガ」なので・・・あまりリアリティを突き詰めてもどうか、と。
また、年齢設定を島村ジョーより高めに設定されたフランソワーズは、お色気濃厚。下着姿で積極的にジョーに迫るシーンにはドキリとしましたねぇ。
それにしても、肉体年齢１７歳の島村ジョーが３年ごとに記憶をリセットされて「終わらない高校生」を延々とやっている、と言うのはいかにも押井守的だなぁ・・・
クライマックスの展開は、マンガ版にもあったような内容で・・・これが、この映画が描く「完結」か、と思いきや、予想外の取ってつけたような大団円。
これには、続編を作りたい、と言う大人の事情があったのかも知れません（マンガ版第一期も、そうした事情で終わりに出来なかったのです）が、これにはいささか脱力。
広げた風呂敷を畳まずに終わらせた辺りも拍子抜けしました。
確かに、映像としては凄いけど、これは物語としては問題あり。
これは、意図せずして「完結編」になってしまったかも知れません。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
神山健治
■出演
００１／イワン・ウィスキー ・・・ 玉川砂記子
００２／ジェット・リンク ・・・ 小野大輔
００３／フランソワーズ・アルヌール ・・・ 斎藤千和
００４／アルベルト・ハインリヒ ・・・ 大川透
００５／ジェロニモ・ジュニア ・・・ 丹沢晃之
００６／張々湖 ・・・ 増岡太郎
００７／グレート・ブリテン ・・・ 吉野裕行
００８／ピュンマ ・・・ 杉山紀彰
００９／島村ジョー ・・・ 宮野真守
（その他のキャスト）
勝部演之
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終わらせなければ、始まらない。
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