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伏 |
これは、文藝春愁創立９０周年記念作品として、「南総里見八犬伝」をモチーフにした桜庭一樹の小説「伏 贋作・里見八犬伝」をアニメ映画にしたもの。
故郷の山村で猟師として暮らす少女、浜路。祖父を亡くしひとり暮らしとなった浜路に、ある日、兄・道節からの手紙が届く。
江戸で共に暮らそう、と言う兄の勧めに従い、江戸へと向かった浜路。
何とか江戸に辿り着いたものの、字が読めないために兄の住処を探しあぐねていた浜路は、犬の面をつけた白髪の青年、信乃と出会った・・・
これはなかなかの力作。
特に素晴らしい、と思ったのは、見事に作り上げられた「江戸」の町並みです。
勿論、歴史に忠実な訳ではないけれど、それは数多ある時代劇とて同じこと。
むしろ、安易に時代劇設定を引っ張ることなく、アニメ流＋現代的なアレンジを加えた物語世界には唸らされました。
（もっとも、原作者の投影である所の、滝沢馬琴の孫娘、冥土の設定はやり過ぎではないかと思いましたが・・・）
惜しいのは、物語と演出。
浜路ならではの“狩人と獲物”と言う視点で、人間と、半人・半犬の「伏」の関係性を描く、と言う物語の狙いは判りますが、映画は、そこが上手く行っているとは思えません。
（伏狩りで、人間の姿をした「もの」を照準に定めた時、これまで「獣」を撃って来た時とは違う感情があるはずなのに・・・）
原作は未読ですが、どうにも本来の物語を咀嚼し、上手く映画表現出来ていないように思えました。
また、ギャグのネタにテンポも悪く、どうにも笑えませんでした。
物語としては面白そうで、映画のビジュアルや世界構築も頑張ってる感はたっぷりあり・・・それでも、何となく物足りない。
まるで、最高の材料と、技術を駆使しながら、最後の味付けで失敗した料理を食べたような、何とも言えない勿体なさを覚える映画でした。
（２０１２年 １０月２４日 にて）
（作品データ）
■監督
宮地昌幸
■出演
浜路 ・・・ 寿美菜子
信乃 ・・・ 宮野真守
滝沢冥土 ・・・ 宮本佳那子
滝沢馬琴 ・・・ 三遊亭歌丸
道節 ・・・ 小西克幸
（その他のキャスト）
坂本真綾 水樹奈々 野島裕史 Ｃｈａｒａ 藤原啓治
阿部敦 浜田賢二 梅津秀行 納谷六朗
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