アウトレイジ
ビヨンド
ＯＵＴＲＡＧＥ ＢＥＹＯＮＤ
これは、広域暴力団内部で繰り広げられる壮絶な抗争を描いたヤクザ映画「アウトレイジ」の続編。
北野武監督としては、初となる「続編」ですが、これが、見事な対象を成して「アウトレイジ」にピタリと嵌まって完成形を見せる辺り、本当に凄い、と思います。
壮絶な抗争の末、関東を牛耳る暴力団・山王会の会長の座を加藤が手にして５年。山王会は勢力を拡大、今や政治の世界にまで手を広げていた。
マル暴刑事までをも手に掛けた山王会に、警察も対策の本腰を入れる。その中で、マル暴（組織犯罪対策部）の片岡刑事は、山王会と関西ヤクザ・花菱会を抗争させ、共倒れとすることを画策。
更に、“切り札”として獄中で死んだと噂を流していた大友を仮出所させるが・・・
往年のヤクザ映画で描かれた義理・人情を廃した、“現代の”暴力団映画だった「アウトレイジ」。
その続編は、意外にも、義理・人情を重んじる、“古い”ヤクザの逆襲となりました。
それ故に、この映画は、「アウトレイジ」で打算と自己愛でのし上がった現代の暗黒部の代表とも言える、会長の加藤と、“企業舎弟”然とした経済ヤクザ、若頭の石原の没落と死を描くものとなりました。
“現代ヤクザ”と言う新奇性と、インパクトのある強烈な暴力描写で、「見世物」としての映画として成立していた「アウトレイジ」に対し、この映画は、新奇性を失った代わりに、憤りに裏打ちされた「ケジメをつける」と言う“古い”価値観を押し出し、正に、往年のヤクザ映画の趣があります。
映画としては、こちらの方が、前作より格段に面白く出来ています。
予測のつかない展開もいいし、関西ヤクザを登場させ、標準語と関西弁を対比させた啖呵の切り合いを見せたのは、さすがは北野武と言う感じ。
また、前作ほどではありませんが、暴力描写も相変わらずのインパクトがあります。
ドリルを使った拷問も壮絶ですし、石原に向けた「野球やろっか」の台詞と、その先の展開も凄まじい。
そしてエンディング。
陰謀を巡らした黒幕が生き延びる、と言うカタルシスのないオチだった前作に対し、今度の映画は、黒幕に対してきっちり決着をつけ、すっきりと完結させたその手腕。
北野武監督、さすがです。
（２０１２年 １０月１２日 ＷＭＣつきみ野にて）
（作品データ）
■監督
■出演
大友 ・・・ ビートたけし
片岡 ・・・ 小日向文世
加藤 ・・・ 三浦友和
石原 ・・・ 加瀬亮
（その他のキャスト）
西田敏行 桐谷健太 新井浩文 松重豊 中野英雄 名高達男
光石研 田中哲司 高橋克典 中原丈雄 深水三章 中村育二
中尾彬 塩見三省 神山繁 月船さらら
■コピー
全員悪人 完結。
■Ｌｉｎｋ
［戻る］