アイアン・スカイ
第二次大戦で敗北したナチス・ドイツだが、実は滅亡した訳ではなく、敗戦直前に密かに逃亡。月面に秘密裏に基地を建設し、再び世界征服の機会をうかがっていた・・・と言う、与太話の類いの映画。
こんな映画を作ったのは、フィンランド人監督のティモ・ヴォレンソラ。友人の脚本家、ヤルモ・プスカラとフィンランド式サウナで汗を流していると、ヤルモがいきなり「ナチスが月から攻めてくる夢を見た」と言い出し、ノリと勢いで映画を企画してしまったのです。
しかし、ナチスネタはさすがに問題が多く、資金繰りに苦労する中で作った予告をインターネット公開した所、アクセスが殺到。世界中の映画マニアから総額１億円を越える寄付金を集めて映画を製作した、と言う、正に世界待望（？）の映画です。
西暦２０１８年、再選を目指すアメリカ大統領は、支持率アップを狙ってアポロ計画以来５０年ぶりの月探査ミッションを実施。
だが、その宇宙飛行士が目にしたのは、月の裏側に築かれた巨大な基地だった。
宇宙飛行士は、突如現れたナチス・ドイツの軍装をした兵士に殺され、同乗していた黒人モデルのジェームズは捕虜になってしまう。
その基地は、第二次大戦、ナチス・ドイツが密かに作り上げたものだった。
敗戦より７０年以上、月の裏側で雌伏していたナチスは、月面探査計画をアメリカの月面侵攻の先発隊ととらえ、先手を取って地球侵攻を開始すべく、親衛隊のアドラー准将を先発隊として送り出し・・・
この映画、アイデアからしてバカ映画の部類で、映画の演出上もシリアスなものではなく、笑える部分が多くあります。
しかし、それだけでは終わらないのが、この映画のスゴい所。
この映画、ナチスと言う、笑いのネタにするにはいささか危険なものを仕込んでいるのに加え、更に、現代アメリカを、“ナチス同様の覇権国家（または独裁国家）”と決めつけ、笑いものにしようと言うのです。
大統領選の為に戦争を起こそう、と言う大統領は、さらにアドラー率いる先発隊を事もあろうに選挙対策委員に採用。ナチスのスローガンをブチ上げて、それが国民の支持を集めてしまう、と・・・国連安保理から、北朝鮮、果てはネオナチに至るまで、大から小までまんべんなく笑いものにしてしまう当たり、もう怖い者知らずと言うか、何と言うか・・・
そんな映画ですが、低予算の割には特撮シーンはしっかりしており、終盤のスペクタクルシーンは、ハリウッドのスペースオペラにも遜色のない仕上がり。
ナチスの宇宙戦艦がツエッペリン飛行船形で、内部も古めかしいものであったりする設定も凝っています。
また、ヒロインのレナーテ役のユリア・ディーツェも可愛らしくもお色気振りまき、映画のビジュアル的な満足度はかなり高いです。
終盤のスペクタクルの後、月の資源を巡って各国が争い、それが全面戦争へ・・・と言うのは、さすがにブラックユーモアも行き過ぎのように思えましたが、映画好評につき、すでに前日譚だか第二部だかが企画されているとか・・・
それにしても、こんな映画がフィンランドから生まれるとはねぇ・・・
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
ティモ・ヴォレンソラ
■出演
レナーテ・リヒター ・・・ ユリア・ディーツェ
クラウス・アドラー ・・・ ゲッツ・オットー
ジェームズ・ワシントン ・・・ クリストファー・カービイー
（その他のキャスト）
ウド・キアー ティロ・プリュックナー ペータ・サージェント ステファニー・ポール
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ナチスが月から攻めてきた!!
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