ディクテーター
身元不明でニューヨーク
これは、お騒がせコメディ俳優、サシャ・バロン・コーエン主演によるコメディ映画。
今回は「ポラット」のようなフェイク・ドキュメンタリーではなく、通常のストーリー仕立てですが、お得意の下品で、ヤバいネタ満載なのは変わりません。
北アフリカのワディヤ共和国の独裁者、アラジーン将軍。
核兵器の開発疑惑について釈明しなければ空爆を行うと国連から警告を受けた彼は、国連で釈明演説を行うため、側近タミールらと共にニューヨークへと向かった。
だが、そのニューヨークでアラジーン将軍は何者かに拉致されてしまい、命からがら逃げ出したものの、いつの間に影武者が立てられ、ワディヤ政府はアラジーン拉致など知らぬ顔で演説の準備を進めている始末。アラジーンは、何とか独裁者に復帰しようとするのだが・・・
アラジーン将軍の設定は、リビアのカダフィ大佐を模したものでしょうか？それに、世界中の独裁者のやりそうなことを誇張して加えることで、独裁政治を風刺して見せますが、それだけで済まないのが、サシャ・バロン・コーエンならでは。
これまでも、アメリカ社会を笑いのネタにして来たのですが、この映画では、アメリカの政治そのものを、独裁政治をダシに笑いものにしよう、と言う魂胆。
それがもっともよく出ていたのが、アラジーン将軍の国連での演説。
独裁政治ならば、こんなことが出来る、と次々列挙する内容が、全て現代アメリカの政策と重なる、と言う皮肉。最後には、
「・・・このようなことは民主国家のアメリカではないのだろうが」
と、念を押すのですから、完全に狙い撃ちにしています。
全編、ギャクとジョークが満載ですが、下ネタが多く、ジョークのブラックさも相当なものなので、これは如何なものか、と自問しているうちに笑いのタイミングを逃してしまう部分もあり、なかなか爆笑とは行きませんでした。
（しかし、映画館で後ろの席に座っていたアメリカ人らしい女性２人連れは爆笑の連続でした・・・そうか、これでアメリカ人は笑えるんだ）
サシャ・バロン・コーエン自身はユダヤ教徒ですが、そのユダヤ教すらネタにする辺りはいささか自虐的ながらも徹底したもの。
確かに面白い映画ですが・・・最悪の民主主義が、時に独裁政治よりも質が悪い、と言うテーマを突きつけて来る辺り、笑いこけてばかりもいられない、背筋に寒気を感じる場面もある映画です。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
ラリー・チャールズ
■出演
アラジーン将軍 ・・・ サシャ・バロン・コーエン
（その他のキャスト）
アンナ・ファリス ベン・キングズレイ ジェイソン・マンツォーカス ジョン・C・ライリー
ミーガン・フォックス エドワード・ノートン サイード・バッドレヤ
■コピー
将軍様のキケンな珍道中、笑撃は核ミサイル級！
■Ｌｉｎｋ
［戻る］