ラム・ダイアリー
これは、ゴンゾ−・ジャーナリストとして知られるハンター・Ｓ・トンプソンの自伝的小説を、ジョニー・デップ主演で映画化したもの。
“ゴンゾー”とは「ならず者」の意味で、ゴンゾー・ジャーナリズムとは、所謂「体当たり取材」の極端なもの。ジャーナリストとして第三者的視点に立つのではなく、対象の中に飛び込み、当事者としてそれを報じるもので、時に、それは法に触れる事もあり、何しろ客観性の抜けた内容は、ジャーナリズムとして異端視されています。
この代表的存在とも言えるハンター・Ｓ・トンプソンと、ジョニー・デップは、映画「ラスベガスをやっつけろ」が縁で友人であったと言われ、この原作に惚れ込んでいたジョニー・デップが自ら映画製作会社を興してまで撮影したのがこの映画です。
１９６０年、プエルトリコ。
地元新聞社で働くことになったフリー・ジャーナリストのポールは、島の有力者でもある実業家、サンダーソンに気に入られ、彼が進める計画への協力を依頼される。
トラブルの保釈金を肩代わりしてくれた借りと、サンダーソンの許嫁の美女、シュノーの色香に惑わされて、ポールは計画に乗るのだが・・・
この物語、実際にハンター・Ｓ・トンプソンがプエルトリコの新聞社で働いていた時の体験が元になっています。
トンプソンは１９３７年生まれなので、１９６０年には２３歳。
この役を、今年４９歳のジョニー・デップが演じるにはさすがに無理があります。
勿論、映画脚本は、ジョニー・デップ主演前提であて書きしているはずで、主人公・ポールの年齢も３０代半ばにされてはいるのですが・・・伝説のゴンゾー・ジャーナリスト、ハンター・Ｓ・トンプソンが、まだ自分のスタイルを完成させていない時代を、すでに確たる自分のスタイルを完成させてしまっているジョニー・デップが演じるのは、どうにも違和感がありました。
まぁ、いつもの「濃い」キャラクターに比べれば、飲んだくれ、美女に心揺さぶられながらも、ジャーナリストとしての自分を模索する姿は、意外とも言える「好青年」の姿で、これを自ら演じたい、と言うジョニー・デップの気持ちも判らなくはないのですが・・・
再現された１９６０年のプエルトリコの風景など見所もあり、出演者も実力派揃いではありますが、映画としてはつかみ所のない、中途半端な印象。
ハンター・Ｓ・トンプソンらしさがある訳ではなく（そのらしさ以前の物語）、ラブストーリーとしても盛り上がらず・・・サンダーソンによって新聞社を閉鎖された記者達の団結が描かれる訳でもなく、最後に、サンダーソンに反撃するような、留飲を下げる場面がある訳でもありません。
ジョニー・デップ主演、と打ち出した割には何とも締まりのない終わり方で、正に竜頭蛇尾な感じでした。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
ブルース・ロビンソン
■出演
ポール・ケンプ ・・・ ジョニー・デップ
サンダーソン ・・・ アーロン・エッカート
シュノー ・・・ アンバー・ハード
（その他のキャスト）
マイケル・リスポリ リチャード・ジェンキンス ジョヴァンニ・リビシ
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