BRAVE HEARTS
−ブレイブハーツー
海猿


 これは、大人気の「海猿」シリーズの第4弾。

 海上保安庁の潜水士・仙崎は、精鋭の集まる特殊救難隊への配備を希望、バディを組む救命士の吉岡と共に配属された。
 吉岡は、同郷で、CAとして働く美香と交際。仙崎も2人目の子供を授かり、傍目には、幸せで順調そうに見えたが・・・
 そんなある日、美香の乗る航空会社の旅客機がエンジントラブルを起こし、非常事態を宣言。
 仙崎ら特殊救難隊にも出動が命じられた・・・

 映画前半、いつものようにじゃれあう仙崎と吉岡を、特殊救難隊の副隊長・嶋が戒めます。
 「特殊救難隊は仲良しクラブじゃねぇぞ」と。
 更に、仙崎に対しては、「大活躍したそうだが、自分も要救助者になったじゃないか」と、その後先考えない行動を責めるシーンもあります。
 これは、正に、この「海猿」シリーズに対する不満(特に劇場版2作目以降)を代弁するもの。
 ドラマ部分に盛り込まれた軽薄さと、ご都合主義丸出しの自己満足的な救出活劇。
 これを製作者も意識して、見直してくれるのでは、と期待しました。

 飛行機事故が発生してからの展開はなかなか。
 まず、燃料が切れるまでに洋上着水の準備を整える、と言うこと、それから着水してからは機体が沈むまでの20分で全乗客・乗員を救出しなければならない、と言う二重のタイムサスペンスを用意し、そこに一致団結して当たる姿が畳み掛けるように描かれます。
 劇場版ならではの迫力のある画面作りもあり、この辺りは見応えがあります。

 しかし、またしてもやるんです。
 沈む機体に、吉岡が取り残される、と言う展開を。

 「海猿2」もそうでしたし、「海猿3」もそう。
 沈んでしまった後で、更に・・・と言う展開、確かに感動的には見せているのですが、2度どころか3度目ともなると、いささか食傷気味です。
 これで吉岡を死なせてしまうのであれば、これはこれで違った展開ともなるのでしょうけれど、4作目のファイナルともなれば、ハッピーエンド以外はありえないから、吉岡が生還するのは予測がつきます。
 ・・・となれば、サスペンスにもならない訳で、これには正直、げんなりしました。

 また、同じような展開、同じようなシーンも多く、この映画も、「海猿2」とダブるシーンが幾度もありました。
 これ見ると、「海猿」の劇場版は2作目で終わっており、3作目と4作目は、極論すれば2作目の焼き直し、いわばセルフリメイクでしかないのが判ります。
 なので、ドラマ部分の軽薄さは変わらず、副隊長の嶋ですら、最後には仙崎にすっかり染められてしまう始末。
 ・・・結局、中身は全然変わらないものでした。

 それから、設定としてあり得ない、おかしな部分多数・・・もう、ツッコミ所満載で、列記する気にもなれません。
 まぁ、これも「海猿2」からの、すでに“伝統”のような部分ですが。

 海上保安庁と言う、あまり馴染みのない組織にスポットを当て、そして、そこで人命救助のために働く人々を描く事で、「人が、人に出来ること」を描き続けて来たこのシリーズ。
 誰かのために、所属や立場を超え、勇気を振り絞って力を結集する姿を描く、その内容は感動的であり、その姿が、困難に立ち向かう為の勇気を与えてくれたのも事実。
 でも、その映画は、既に、その役割を終えたように思います。

 (月日 にて)


(作品データ)

 ■監督

羽住英一郎 

 ■出演

 仙崎大輔 ・・・ 伊藤英明
 吉岡哲也 ・・・ 佐藤隆太

 仙崎環菜 ・・・ 加藤あい
 矢部美香 ・・・ 仲里依紗

 嶋一彦 ・・・ 伊原剛志

(その他のキャスト)
 三浦翔平  平山浩行  矢島健一  螢雪次朗  神保悟志  時任三郎

 ■コピー

命をかけて、命を救う――。 

 ■Link

http://www.umizaru.jp/index.html 


戻る