スープ
〜生まれ変わりの物語〜
これは森田健のノンフィクション「生まれ変わりの村」にインスピレーションを受け、大塚祐吉が脚本・監督した映画。
インテリアデザイナーの渋谷健一は、２年前に離婚してから“生きる死体”のようになってしまった。
中学生の娘、美加はロクに口も聞いてくれず、会社での仕事も不調続き。
美加の１５歳の誕生日、美加が友人と万引き事件を起こし、思わず手を上げてしまった渋谷は、娘との関係に致命的な亀裂を入れてしまう。
その翌日、会社の上司の綾瀬由実と出張に出掛けた渋谷は、出張先で事故に遭い、共に死亡。気づいた時には「あの世」にいた。
その死後の世界では、いつの日にか生まれ変わるまでを過ごすのだと言う。
ただし、生まれ変わる際には全ての記憶を無くしてしまう。
だが、渋谷は、娘を見守り、娘と和解したい、と、記憶を保ったままで現世に戻れないか、その方法を模索するのだが・・・
この映画の主役は、意外にもこれが初の主演と言う生瀬勝久。いつにないテンションの低い演技は、妙に新鮮でした。
低予算の映画だとは思いますが、曲者俳優を揃えたキャスティングはなかなか面白いもの。
低予算故に、俗世じみた「あの世」の描写も、なかなかいい味を出しています。
物語の設定も、「生まれ変わり」のルールをはっきりと描かず、解釈のしようが様々あるのが面白いです。
死んだ人は生まれ変わるのだけど、現世に未練のある人は、「そこ」である時間を過ごします。
そして、“スープ”を飲む事で、それまでの記憶をなくし、生まれ変わる為に現世に戻る。
でも、記憶を保ったまま生まれ変わる方法もあるにはあるのですが、それでも、生まれ変わって、自我がはっきりする思春期の１５歳前後にならないと記憶は蘇らない、と言う設定もいい。
これで、結果として渋谷は娘を見守る事が出来ない、と言う事になってしまいますが・・・
映画後半は、生まれ変わった渋谷が１５歳の少年に成長した後に、前世の記憶を取り戻す所から始まる「青春ドラマ」。
ここのパートをリードするのは広瀬アリス演じる少女。彼女も、前世の記憶を持って生まれ変わった人物なのですが、それが誰が判明した所でブッ飛びましたね、これは・・・
ここで、渋谷は娘と和解をすることが出来、物語は感動のクライマックスを迎えます。
しかし、それで終わらないのが、この映画の面白い所。
更に、綾瀬由実とまで出会ってしまい、そこから２人の人生のやり直しが始まる、と言う爽やかなエンディングはよかったです。
PS
エンドロールの後、「彼女」までが生まれ変わっているのを見せられたのにはニヤリとさせられました。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
大塚祐吉
■出演
渋谷健一 ・・・ 生瀬勝久
渋谷美加（１４歳） ・・・ 刈谷友衣子
渋谷美加（３０歳） ・・・ 伊藤歩
綾瀬由美 ・・・ 小西真奈美
（その他のキャスト）
野村周平 広瀬アリス 橋本愛 大後寿々花 入江雅人
堀内敬子 凜華せら 堀部圭亮 池田鉄洋 谷村美月
山口紗弥加 羽野昌紀 古田新太 松方弘樹
■コピー
「娘に会いたい・・・」願いはたったひとつだけ。
あなたは信じますか、生まれ変わりを。
■Ｌｉｎｋ
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