| ＢＥＬＬ ＦＬＯＷＥＲ |
ベルフラワー
これは、現在３１歳になるエヴァン・グローデルが自主製作で作り上げた、長編映画デビュー作。
映画製作のための資金を途中で使い果たしてしまい、撮影を途中中断し、働いて製作資金を貯めていたため、映画完成までには３年もの時間がかかってしまったと言います。
「マッドマックス」の世界に憧れるウッドローとエイデンは、映画に登場する暴走族のリーダー、ヒューマンガスのようになりたくて、世界破滅に備えて火炎放射器や改造車を作っている二人組だ。
そんなウッドローは、酒場で行われた「コオロギ早食い大会」に出場したことが縁でミリーと知り合い、デートに誘う。
やがて２人は恋人同士のようになり、半同棲をするまでになるのだが、幸せな日々は長くは続かなかった・・・
この映画は、要約して言うと「失恋を描いた恋愛映画」です。
火炎放射器の炎、暴れ回る改造マッスルカー・・・アクション映画のような道具立ての中、描かれるのは、切なくも純粋な傷心の物語。
その内容としては陳腐なもの。
うぶな男が恋に落ちるが、女には既に別の男がいた。それで男は身を引くのだけど、それでも彼女の事が忘れられない。
これまで打ち込んでいた全ても、新しい彼女も、彼を夢中にさせる事はない。
彼の心は、彼女が持ち去ってしまったのだ・・・
そんな男の悲痛な叫びを、エヴァン・クローデルは荒々しくも大胆にフィルムに焼き付けます。
この物語、実は映画製作を夢見て故郷のウィスコンシンからハリウッドにやって来たエヴァン・グローデル監督が、そこで体験した自らの失恋を元にしたもので、それを自ら演じています。
しかも、その失恋相手と言うのが、ミリーを演じたジェシー・ワイズマンだと言うのだから驚き。
この映画、自分の失恋を、自分自身が、相手もそのままに映画の中でもう１度描いたものなのです。
確かに、失恋というのは、大きな心の痛手であり、それを逆にエネルギーに変えて何かを成し遂げる、と言う事があるのは判りますが、何も、古傷に塩をすり込むような真似をするなんて・・・
でも、それこそがエヴァン・グローデルがなくした何かを取り戻し、明日へ歩き出すのに必要なことだったのでしょう。
この映画は、失恋の痛みを、火炎放射器の炎で焼き払い、未来を開くものだったのです。
そうして切り開いた映画監督の道を歩むエヴァン・グローデル監督が、次に何を見せてくれるのか、楽しみです。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
エヴァン・グローデル
■出演
ウッドロー ・・・ エヴァン・グローデル
ミリー ・・・ ジェシー・ワイズマン
エイデン ・・・ タイラー・ドーソン
（その他のキャスト）
レベッカ・ブランデス ヴィンセント・グラショー
■コピー
火炎放射器の炎で描く狂熱の青春映画、誕生。
■Ｌｉｎｋ
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