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これは、公安警察の国際テロ対策担当でる外事課、通称・外事警察の知られざる活動を描いたＮＨＫのサスペンスドラマを映画化したもの。
ＮＨＫ曰く「ニュースソースは明かせない」と言う綿密な取材による、リアルな公安警察活動がウリの映画です。
韓国で、核爆弾用の濃縮ウランが流出した、と言う情報がＣＩＡからもたらされた。更に、東日本震災の被災地の大学から、核関連の軍事機密が震災後の混乱に乗じて盗まれた、と言う報告も入った。
折しも、核拡散防止の国際会議の開催を控え、国際テロリストによる核テロを懸念した日本政府は、韓国で行動中の公安警察・外事四課の住本を呼び戻す。
住本は、捜査の為ならなりふり構わない悪辣なやり方が厭われ、“公安の魔物”と称される程の男だった。
住本は、日本国籍を持つ朝鮮人輸入業者、奥田が工作員ではないかと疑い、彼の妻を協力者に仕立て上げるべく接近するのだが・・・
知られざる現代日本の諜報戦を描いた映画。
とは言え、これは、よくあるスパイ映画のような派手なアクションを見せるのではありません。
トーンを落とした手持ちカメラ映像を多用したドキュメンタリータッチの映像で描かれるのは、関係者を金で揺さぶり、過去の弱みを突いて協力者に仕立てて、情報を集める、地道で巧妙な公安捜査の手法。
わざと協力者を怒らせ、怒りの感情を行動のエネルギーとさせるなど、恐らくは取材で得られたであろう部分もあり、これはなかなか興味深く観られました。
また、関係者を欺す事をも厭わず、場合によっては微罪をデッチ上げ、別件逮捕して容疑者を押さえるなど、捜査の為なら、汚れ仕事も行う公安捜査の進め方も描かれますが・・・忘れてはいけないのは、これは国営放送の製作した映画。
国として本当に見せたくない暗部は、これでも描かれていないと考えるべきでしょう。
映画は、さすがにリアルな題材を扱う訳にもいかず、「核テロ」と言う大風呂敷にもなりかねないものですが、それでも、細かなディテールの積み重ねと、緊迫感のある展開で息を継がせず、押し切るのはなかなか見事なもの。
また、感情を押し殺し、正体を掴ませない男を演じた渡部篤郎も見事でしたが、この映画では、それ以上に真木よう子の好演が光っていたと思います。
いただけなかったのはクライマックスの展開。
張り巡らせた伏線を一気に解決しなければならない、その局面で、目の前に起動した核爆弾がカウントダウンを始めているのに関わらず、延々と状況を台詞で説明し、挙げ句にメロドラマはないでしょう。
核爆弾を爆発させる事など、冒頭のシーンで「ない」としてしまっているのですからタイムサスペンスも成立せず、“公安の魔物”とやらも、その土壇場で「分かり合えると信じる。それだけが世界を変えられるんだ」と気の抜ける事を言う。
妙に甘ったるい決着のつけ方も含め、「“裏の世界”を描く」と大上段に振りかぶってみたものの、何とも締まりのない幕切れに拍子抜けしました。
（２０１２年 ６月２日 １０９シネマズＭＭにて）
（作品データ）
■監督
堀切園健太郎
■出演
住本健司 ・・・ 渡部篤郎
奥田果織 ・・・ 真木よう子
（その他のキャスト）
キム・ガンウ 尾野真千子 イム・ヒョンジュン 北見敏之 滝藤賢一 渋川清彦
山本浩司 豊嶋花 田中泯 イ・キョンヨン キム・ウンス パク・ウォンサン
ユン・タキョン 遠藤憲一 余貴美子 石橋凌
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誰も手をつけられなかった“裏の世界”遂に映画化
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