私が、生きる肌
これは、スペインの巨匠、ペドロ・アルモドバルが描く、エロティックなミステリー。
天才外科医のロベル・レガルは、人工皮膚と整形外科に関する世界的な権威だ。
だが、彼には秘密があった。
自宅の２階に監禁された美女・ベラと、彼女を対象に繰り返される“究極の”人工皮膚の研究だった。
ある日、そこに踏み込んで来た使用人の息子に、ベラが犯されるのを目撃したロベルは・・・
この物語は３部構成になっています。
序盤の第一部で、現在の状況を描き、第二部で、ロベルの妻子の死と、ベラが監禁されるまでを描きます。第三部で再び現代に戻り、この物語に決着をつける、と言う構成。
美女を極秘裏に監禁し、研究対象としている、と言う事だけでも、背徳と倒錯の予感がありましたが、第二部で解き明かされる、その数奇な物語は、正に奇想天外なもの。
こんな復讐、これまでに見たことも聞いたこともありません。
これは、ひとりの男の孤独な復讐であり、その課程で、正に「策士、策に溺れる」ことになるのです。
ただ、その策に溺れる様と言うのは、これは理解出来なくもないもの。
確かに、長い時間をかけた仕事、それに没頭するが故に、その成果を愛おしく思ってしまう事は頷ける人が多いのではないでしょうか？
しかし、男の悲劇と言うのは、その結果、当初の目的を忘れてしまった事でしょう。
映画に描かれるのは、濃厚な性の描写で、背徳的でもあるのですが、物語を貫いているのは意外にも教条的なテーマ。
策に溺れ、娘の復讐を忘れた男には報いがあり、親子の情を忘れず、家に帰ろうとする息子には、彼を受け入れる門が開く・・・血なまぐさい結末を迎える映画ですが、ハッピーエンドに見えるのは、そうしたテーマ故かもしれません。
（２０１２年 ５月２６日 ＴＯＨＯシネマズ川崎にて）
（作品データ）
■監督
■出演
レベル・ロベル ・・・ アントニオ・バンデラス
ベラ・クルス ・・・ エレナ・アナヤ
（その他のキャスト）
マリサ・パレデス ヤン・コルネット ロベルト・アラモ
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