タイタニック
３Ｄ版
これは、１９９７年に公開されたジェームズ・キャメロン監督渾身の超大作の３Ｄ版。
この「タイタニック」は、２億ドルというハリウッド史上空前の製作費を費やし、２０世紀フォックスとパラマウント映画の社運まで賭けて作られた話題作で、映画は期待を裏切らず大ヒットを飛ばし、アカデミー賞では史上最多の１１冠に輝きました。
（アカデミー賞表彰式で、両手に一杯のオスカーを抱え、映画台詞を借りて「Ｉ’ｍ Ｋｉｎｇ ｏｆ ｔｈｅ ｗｏｒｌｄ！」と吼えたジェームズ・キャメロンの姿は後々まで語り草となりました）
そんな傑作とは言え、公開から既に１５年。
さすがに色褪せているのでは、と懸念も抱えつつ劇場に向かいました。
豪華客船「タイタニック」は１９１２年４月１０日、英サウサンプトン港からニューヨークへの処女航海へと出航する。
財産を失った家の存続のため、大富豪キャル・ホックリーと婚約した上流階級の娘、ローズ。ポーカーで乗船券を巻き上げ三等船室に乗り込んだ絵描きの青年ジャック。
ふたりは、「タイタニック」の船上で出会い、恋に落ちる。
そして、１９１２年４月１４日。
ふたりの恋と豪華客船「タイタニック」に運命の時が訪れようとしていた・・・
この３Ｄ版ですが、後加工による３Ｄ化の他、ほとんど手を加えていないそうですが、現在の目で見ても最新作に勝るとも劣らないその出来栄えには感嘆しました。
画面にみなぎる迫力、こだわり抜き、作りこまれたセット・・・確かに、ＣＧは今となっては密度の荒さを感じるものの、それを補うカットと演出で魅せる、息を呑むほどの見事な映像。
なるほど、これが「名作」と言うものか・・・
この映画、既に３度目の鑑賞になりますので、あらためて全体を見ると、この映画、脚本は平凡なんです。
（なるほど、アカデミー賞でも脚本賞はノミネートさえされなかったのがよく判ります）
確かに、氷山への衝突から沈没まで、その日、「タイタニック」に何が起きたかのをしっかり見せる、と言うことは出来ていますし、そのカタストロフを手に汗握るサスペンスに盛り上げる辺りはさすが。
（とは言え、これは演出の手柄かなぁ）
しかし、主人公・ローズを除く人物描写が薄っぺらで群像劇として物足りないものになっているばかりか、ラブロマンスとしても、これでは及第点は与えられないでしょう。
ラブロマンスに仕立てるならば、ホックリーをもっと魅力的に描き、彼も（彼なりの想いで）ローズを愛していることにしないと、ローズの「揺れる恋心」を描けません。
（事実、描けておらず、ローズの気持ちは出会い以降、ジャックに傾きっぱなしです）
でも、それも当然かもしれません。
この映画、実は、悲恋のラブロマンスなどではなく、ローズと言う女性が自分の人生を掴み取るビルディングス・ロマンであり、そう言う見方をしてこそ感動する種類の映画だと思います。
上流階級育ちで、何も出来ない箱入り娘だったローズが、歴史に残る海難事故と言う悲劇を通じて、自分で人生を決められる女性へと逞しく成長して行く、それこそが、この「タイタニック」の本質ではないでしょうか。
序盤、激昂するホックリーに泣くだけだったローズが、ジャックと共に生きると決めてからは見る見る強くなって行く。
ホックリーに殴られてもひるまず、ジャックを救うためならば、自ら死地に赴き、身を刺すような冷たい海水にも飛び込んで行く。
これぞ、ジェームズ・キャメロンの大好きな「強い女」の物語であり、その物語に説得力を与え、ヒロインを逞しく演じきったケイト・ウィンスレットの熱演が光ります。
ケイト・ウィンスレットはこれで最優秀主演女優賞が獲れなかったが不思議なほどで、間違いなく、この映画こそ、彼女の代表作でしょう。
上映時間３時間９分と言う大長編ながら、この映画は長さを感じさせず、最後まで見事に押し切る。
ラストシーンの演出は、にくいほどの泣かせの演出で、これには、今回も涙させられました。
（２０１２年 ４月１３日 ＴＯＨＯシネマズ上大岡にて）
（作品データ）
■監督
ジェームズ・キャメロン
■出演
ジャック・ドーソン ・・・ レオナルド・ディカプリオ
ローズ・デヴィット・ブカター ・・・ ケイト・ウィンスレット
キャル・ホックリー ・・・ ビリー・ゼーン
ローズ・カルバート ・・・ グロリア・スチュアート
（その他のキャスト）
キャシー・ベイツ フランシス・フィッシャー ビル・パクストン バーナード・ヒル ジョナサン・ハイド
ヴィクター・ガーバー デヴィッド・ワーナー ダニー・ヌッチ スージー・エイムス ユアン・スチュワート
ヨアン・グリフィズ ロザリンド・アイルズ
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劇場で、感動がもっと深くなる。
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