おかえり、はやぶさ
これは、ＪＡＸＡの小惑星探査機「はやぶさ」の“奇跡の旅路”を描く映画。
２０世紀ＦＯＸ、東映に続き、この３本目は松竹映画です。
小惑星イトカワの表面からサンプルを持ち帰るという困難なミッションに挑むため、２００３年５月に打ち上げられた探査機「はやぶさ」。
プロジェクトチームで、イオンエンジンに携わるエンジニアの大橋は、火星探査機のぞみに人生を捧げるも、その失敗で心を閉ざしてしまった父親に反発していた。
一方、ＪＡＸＡ職員の息子、風也は、闘病生活を続ける母を見舞いながら、宇宙への想いを募らせていたが・・・
女性研究者を主役にしたビルディング・ストーリーのＦＯＸ版、川口チームリーダーを主役に据え「プロジェクトＸ」ばりの男臭さが魅力だった東映版に対し、この松竹版は、対象年齢はやや低め、と言う印象。
子供漫才コンビ「まえだまえだ」の弟、前田旺志郎を起用、はやぶさの技術解説をさせるなど、前半は「子供向け」感が強いです。
ただし、その内容はしっかり。
重厚なドラマに力を注いだ分、技術解説や、宇宙への憧れや夢、と言う部分が薄かった東映版に比べ、映画を観る子供たちに対し、その成果を語り、人が宇宙に馳せる想いまでを描く内容には好意が持てました。
また、３Ｄを導入した映像は３作中でも一番で、富田勲の音楽と合わせ、宇宙を描いたシーンは素晴らしいものでした。
ただし、映画としてのまとまりは今ひとつの印象。
はやぶさの旅路だけでも、波瀾万丈のドラマなのに、豊富な技術解説、それに、風也親子の闘病ドラマを盛り込み、エンジニアの大橋の親子の確執、さらにはロマンスまで盛り込もうと言うのですから、これは完全に盛り込み過ぎ。
子供向けと言いつつ、青春ドラマとしても、そして、子供を連れて来た親世代にも、と言ういささか欲張りな狙い。確かに、家族みんなで楽しめることを目指すのは松竹映画の伝統であり美点でもあるのですが・・・とにかく、はやぶさの旅路だけで、見応えのあるドラマになるはずなのです。
３本競作で、他に無いものを、と欲張る気持ちは分からないでもないですが、エピソードを刈り込み、焦点を絞ってドラマを充実させて欲しかったところです。
（２０１２年 ３月 １４日 ＴＯＨＯシネマズ上大岡にて）
（作品データ）
■監督
本木克英
■出演
大橋健人 ・・・ 藤原竜也
野村奈緒子 ・・・ 杏
岩松風太 ・・・ 前田旺志郎
大橋伊佐夫 ・・・ 三浦友和
（その他のキャスト）
森口瑤子 田中直樹 升毅 木下ほうか 林泰文 山田純大 杉村蝉之介
大杉漣 岸本加世子 鶴田忍 金田明夫 岡田圭右 村井美樹 石丸謙二郎
大島さと子 カンニング竹山 豊原功補 宮崎美子 中村梅雀
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