おとなのけんか
これは、ヤスミナ・レザの戯曲「大人は、かく戦えり」を、ロマン・ポランスキーが映画化した辛口のコメディ。
物語の発端は子供のけんかだった。
カウアン家の息子ザッカリーが口喧嘩の挙げ句揉み合いとなり、たまたま手に持っていた木の枝でロングストリート家の息子イーサンを殴ってしまったのだ。
イーサンは前歯２本が折れ、ザッカリーの両親は謝罪のためにロングストリート家を訪問。
さすがに子供のけんかでいちいち裁判を起こすわけはないが、法的な処理をきちんとするためにも和解文書を作成、これで一件落着と思ったのだが・・・「どうぞお茶でも」とロングストリート夫妻が言い出せば、カウアン夫妻もそれに応じて両家はしばし歓談。
しかし、これが、新たな争いを生むことになった・・・
この映画、舞台はアパートの室内に限定され、登場人物も２組の夫婦、４人のみと言う、まるで舞台演劇のような設定。
そこで繰り広げられる会話・・・と言うか、丁々発止のやりとりだけで、１本の映画になってしまうのは、巨匠・ポランスキーの力量と、これだけの名優の熱演があってこそ。
特に、女優陣の熱演がすごいです。ヒステリックに取り乱すジョディ・フォスター、ゲロまで吐いてみせたケイト・ウィンスレット・・・アカデミー賞女優がここまで演るんですから。
その内容は子供のけんかに端を発した、それも、つまらぬ諍いなのですが・・・体面だの、良識だの、モラルだのと、「大人」が身にまとっているつまらぬものに縛られ、本音と建て前を使い分けていた４人が、諍いで感情的になり、更に酒の助けも借りて、徐々に本音をぶつけあうようになっていくのは面白い。
家族対家族で対立していたのが、ひょんなきっかけで夫と妻との対立になっていくとか、携帯着信ごとに流れをぶっち切って、ドラマを寸断するとか・・・コメディ演出も冴え、場内は笑いの連続でした。
巨匠・ポランスキーらしからぬ小品ですが、いやいや、これはなかなかの曲者。
エンディングの締めも見事なものでした。
（２０１２年３月４日 ＴＯＨＯシネマズ川崎にて）
（作品データ）
■監督
ロマン・ポランスキー
■出演
ペネロペ・ロングストリート ・・・ ジョディ・フォスター
マイケル・ロングストリート ・・・ ジョン・C・ライリー
ナンシー・カウワン ・・・ ケイト・ウィンスレット,
アラン・カウワン ・・・ クリストフ・ヴァルツ
■コピー
顔で笑って、心に殺意。
■Ｌｉｎｋ
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