ＤＯＣＵＭＥＮＴＡＲＹ
ｏｆ ＡＫＢ４８
Ｓｈｏｗ ｍｕｓｔ ｇｏ ｏｎ
少女たちは傷つきながら、夢を見る
これは、国民的アイドルグループ「ＡＫＢ４８」の２０１１年の活動をまとめたドキュメンタリー映画。
２０１１年１月公開の「ＤＯＣＵＭＥＮＴＡＲＹ ｏｆ ＡＫＢ４８ 〜１０年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう」の続編と言える映画です。
監督は、岩手県出身の高橋栄樹。
そのせいもあって、この映画、２０１１年３月１１日に起きた東日本大震災を映画の背景に置いて描くものになっています。
映画は、震災直後、イベントが中止になったことから始まり、被災地への慰問ライブ活動と、被災地出身の第１２期研究生・岩田華怜が抱えている葛藤を描くのですが・・・それが、この映画のバランスを崩してしまっているように思えました。
駆け出しの研究生に過ぎない岩田華怜はＡＫＢ４８の中心にはおらず、ＡＫＢ４８の１年間の活動を描く映画としては総選挙にジャンケン大会、夏のコンサートと大きなイベントは外せず、そこでの主役は、当然、選抜メンバーになるからです。
映画は、華やかな表舞台ではなく、舞台裏に密着。
総選挙で１位となって号泣した前田敦子の姿はＴＶでも見ましたが、表舞台では笑顔さえ見せていた大島優子、クールさを崩さなかった板野友美が、舞台裏に下がって泣き崩れている様子・・・活動当初より５年間の行動を共にしていた、高橋監督以下の撮影スタッフと言う仲間だけに見せる素顔を映画は映し出します。
圧巻は、中盤の山場になる夏の西武ドームでのコンサート。
大舞台に呑まれたメンバーとスタッフが、右往左往、どたばたで終わった初日。その後、「自分たちでもわかっていると思うが、今日のコンサートは最低だった」と秋元康に酷評されたメンバーたちが、夜遅くまでの練習と翌日のリハーサルでコンサートの内容をレベルアップさせ、二日目の本番で完全燃焼するのが、この映画で最も盛り上がる部分。
大島優子は、舞台挨拶で「ここはホラー映画です」と言っていましたが、これは正直、戦争映画だと思いました。
寝不足と極度の緊張、ステージでは強烈なスポットを浴び、下がっても熱気のこもった舞台裏で待機する彼女たちが熱中症で次々に倒れて行く。選抜メンバーは手厚い看護が受けられますが、研究生クラスは、扇風機の風を当てられながら横たわるだけ、死屍累々の有様。
リハーサル時に過呼吸の発作を起こした前田敦子はコンサート中にも倒れ、大島優子もアンコール直前にはパニックに陥り、段取りすら判らない程に錯乱する有様。
ナンバー１、２を欠く、そんな状況のステージに、キャプテン・高橋みなみは、ふらふらし倒れそうな自分を鼓舞してステージに飛び出して行く・・・もう、これは戦争映画、そうでなくともスポ根映画のノリ。しかも、ヘタなそれらの映画より見応えがあるのは、それが「現実」であることです。
そして、舞台に出て来た前田敦子は、立っている事さえ辛そうでしたが、それでもマイクを握り、曲が始まれば輝くような笑顔を見せて歌い踊る、そのプロ根性に感心しました。
汗と涙、そして、死に物狂い（実際、高橋みなみは「死ぬ気でやろう」と鼓舞していました）の姿がそこにはあります。
はらは、取り立ててファンと言う訳ではないので、それこそ、メンバーの顔と名前が一致しない状態で観始めたのですが、印象に残ったのはキャプテン・高橋みなみの格好よさ。
メンバーで一番小柄なのに、ステージの上では気合い爆発。時に見せる厳しい表情は精悍と言う言葉が似合います。
コンンサートで、スタッフから「ヤバイ、たかみな（＝高橋みなみ）、倒れる」と言われながらもステージに上がり、自分が出てない時でも舞台袖からステージを見守る責任感の強さ。初舞台に臨む後輩には激励メールを送る気遣い・・・いいリーダーです、ほんと。
総選挙の後、泣きじゃくる前田敦子を抱きしめ、「つらかったなぁ、よくがんばった」（何故か男言葉）と言うのは、ほとんど、ヒーローの台詞です。
「ＡＫＢ４８とは高橋みなみである」と言う秋元康の言葉にも納得です。
基本的にＡＫＢ４８のファン向け映画だと思いますが、これはＡＫＢ４８に関心のない人間が観たとしても映画として面白いものになっていると思います。
そして、ＡＫＢ４８と言うアイドルグループが、固い結束と、ひとりひとりのたゆまぬ努力と向上心に支えられたものであること。
日本の国民的アイドルグループは、正に日本人ならではの存在である事に納得をした映画でした。
（２０１２年１月２７日 ＴＯＨＯシネマズ上大岡にて）
（作品データ）
■監督
高橋栄樹
■出演
ＡＫＢ４８
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少女たちは傷つきながら、夢を見る
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