アニマル・キングダム
これは、２０１０年のオーストラリア・アカデミー賞で１６部門にノミネートされて１０部門で受賞し、アメリカでもアカデミー賞やゴールデングローブ賞にノミネートされたオーストラリア製のクライム・サスペンス。犯罪一家の暮らしぶりを描いた映画です。
麻薬の過剰摂取で母を亡くした１７歳のジョシュアは、母が縁を切っていた祖母ジャニーンの家に引き取られることになった。祖母にはジェイの母の兄弟に当たる３人の息子がいて、全員が強盗や麻薬取引などの違法行為で生計を立てている“犯罪一家”だった。
そんな一家の暮らしに少しずつ馴染んで行くジョシュアだったが、ある日、強盗仲間のバズが警官に射殺され、その報復として、一家は警官を射殺してしまうのだが・・・
映画は、まるでホームドラマのように犯罪一家の暮らしぶりを描きますが、バズ殺害から一気に緊迫感を高めて行きます。
このサスペンスの中、徐々に露わになる一家の素顔・・・特に、一家の長男、アンドリューの見せる冷酷さと凶暴さ。明確には描かれませんが、犯罪から足を洗おうとしたバズが殺されたのも、次男・クレイグの死も、恐らくはアンドリューが裏で糸を引いていたのではないか、と思わせます。
また、映画の中盤まで影の薄かった祖母・ジャニーンの本性が露わになっていく終盤も見応え充分。
一家の主が誰か、と言うのがここで明かになるのです。
映画の中心となるエピソードは、一家の逮捕後の裁判で、ジョシュアから有効な証言を取ろうとする警察（検察）と、それを阻止しようとする一家の攻防。
その中で、アンドリューがジョシュアのガールフレンドを手にかけた事で、先の展開が一気に読めなくなります。
何故かと言うと、このジョシュア、寡黙な上に、どうにも人間性が読みにくい。
冒頭の母の死の場面でも、瀕死の母の隣でＴＶのクイズ番組に心をとられている描写があり、「常人ではない」と言うイメージを与えているからです。
この「読めない」男が、終盤、観客さえ欺き、ドラマをひっくり返す。
ラスト、“ケリをつけた”ジョシュアは、もう何を考えているか判らないガキではなく、逞しい男の表情を見せます。
そんな成長をも描いて見せたこの映画、小品ながらも与えられた高い評価には納得の出来でした。
（月日 にて）
（作品データ）
■監督
デビッド・ミショッド
■出演
ジョシュア・コディ ・・・ ジェームズ・フレッシュヴィル
ジャニーン・コディ ・・・ ジャッキー・ウィーヴァー
（その他のキャスト）
ベン・メンデルソン ジョエル・エジャートン ガイ・ピアース ルーク・フォード
サリバン・ステイプルトン
■コピー
犯罪がつなぐ、家族のきずな。
■Ｌｉｎｋ
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